2020年東京オリンピック・パラリンピックに合わせて「日本人と自然」をテーマに「舞台芸術」「食文化・自然」「デザイン・ファッション」をはじめとする“日本の美”を国内外に発信しているのが「日本博」です。2020年11月9日に開催された「観世清和×コシノジュンコ 能+ファッション “継承される伝統と現代の融合“」は、日本の伝統芸能の一つである「能」と、長年最先端を走り続ける世界的なファッションデザイナーの1日限りのコラボイベント。その模様をレポートします。
このイベントは2部構成。
第1部 ファッションショー+能〜コシノジュンコによる日本の美意識を表現
まずはコシノジュンコ氏デザインの能の衣装を纏った演者が登場。青い髪の風神と白い髪の雷神は、黒がベースで袖や襟に金色が流れるようにデザインが施された装束で登場。一気に伝統芸能の世界に引き込まれます。その後、ファッションモデルの方々が、胸元がV字に開き袖が振袖のように長くなった着物風のロングドレスを纏って能舞台をウォーキング。通常のファッションショーならハイヒールを履いてステージを闊歩するモデルさんも、この舞台では足袋を履いてスルスルとゆっくりと進みます。髪を全部逆立てて尖らせたり巨大なカールに仕立てたヘアスタイルは、近未来的。スポットライトがあたり、松が描かれている「鏡板」と呼ばれる背景に映るモデルの影を見ていると、「他にも誰かそこにいるの?」と思ってしまうほど、不思議な視覚効果が。
さらに視覚に訴えるものとしては、プロジェクションマッピングが多用されていること。滝が流れ落ちるような映像や極彩色に彩られる舞台の上の屋根が、能舞台をまた違ったものに見せてくれます。BGMは笛や鼓など能の調べ。「和と洋」「伝統と現代」の対比に心を奪われます!
第2部 能 紅葉狩 鬼揃
この演目の鑑賞は、私は初めて。紅葉の季節の今にぴったりな演目なので、楽しみにしていました。
平維茂(たいらのこれもち)が山中を進んでいると、美しく着飾った高貴な女人たちが紅葉を愛でています。実はこの美女たち、正体は鬼。宴席に誘われた維茂は酒をたくさん飲まされ、眠り込んでしまいます。維茂はどうなるのでしょうか・・・。
見どころは、前半では豪華絢爛な装束を纏った女人たちが並ぶ美しさ。そして後半では鬼が正体を現し、面は般若に、髪は真っ赤に変わり、平維茂に襲いかかる変化です。美しさから一転しての恐ろしさに、演舞だとわかっていながらも怖くなってしまった私です。
主人公(シテ)を演じる観世清和師をはじめとする演者・謡や囃子(笛)や鼓の奏者は長年の伝統に則った様式美の中で演じ、上演前後の舞台の上がり下がりでさえその所作の美しさに感動しました。七百年続く能の伝統の重みを改めて感じました。
このコラボイベントは、一日限り。なんと贅沢な、素晴らしい時間でした。
画像:すべてⒸ花井智子
主催:株式会社インプレザリオ ACT4(アクトフォー) www.impresario.co.jp
ACT4 MY FIRST 伝統ページ http://impresario.co.jp/myfirstdento/
日本博 https://japanculturalexpo.bunka.go.jp/programs/371/
Text /トラベルアクティビスト真里
世界中、好奇心を刺激する国々を駆け巡るトラベルアクディビスト。外資系金融機関に勤務の後、1年の3分の1は旅をする生活へ。ジョージア、バルト3国はじめ訪れた国は50カ国以上。日本中も巡り、行った先で出会った人、風景、食etc. 旅の醍醐味をレポートします。