【不老脳 (9) 】スマホで脳が衰える!? スマホのどこが脳に悪いのか? 上手なスマホとの付き合い方

毎日の生活に必携のスマホですが、コロナ禍でますます覗き込む時間が増えているという人が多いのではないでしょうか?脳科学の見地から糸藤友子さんが、警鐘とアドバイスを寄稿してくれました。

「スマホをポケットに入れているだけで学習効果が著しく下がる」「1日2時間を超えるスマホ使用は、うつのリスクを高める」。これは、脳科学に関する世界中の研究結果をもとに、スマホなどデジタルメディアの悪影響を告発する『スマホ脳』(アンデシュ・ハンセン著、久山葉子訳、新潮新書)の一節です。世界13カ国で翻訳され世界的ベストセラーになって、2020年11月に日本でも出版されました。スマホの使いすぎが原因で、「認知機能の低下」や「脳過労」など、脳に異常をきたす人が増えていると、指摘する医師や研究者は数多いのです。

私が働く脳科学カンパニーのCTOである川島隆太博士(東北大学教授)は、すでに2018年3月に『スマホが学力を破壊する』(集英社新書)を上梓し、子どもたちへのスマホの影響に警笛を鳴らしています。これは仙台市の7万人の子どもたちを対象に数年間にわたって行われた大規模調査の結果で、スマホを長く使用するほど、子どもの学力は低下することがはっきりと示されました。その因果関係は明らかで、ほかの因子(睡眠や自宅での学習時間)に関係なく、スマホを使用したぶん、学力に影響があったのです。そしてスマホの使用を制限したところ、子どもの学力が回復・向上することもわかっています。スマホをやめるだけで偏差値が10上がったという驚きの結果もあります。

またスティーブ・ジョブズを筆頭に、IT業界のトップは、我が子にデジタル・デバイスを与えないという話は有名です。スティーブ・ジョブズはiPadを我が子のそばに置くことすらしないかったそうですし、ビル・ゲイツは子どもが14歳になるまでスマホは持たせませんでした。

ではなぜスマホは私たちに悪い影響を与えるのか、少し説明させてください。

私たちは日々、常に手の届く場所にスマホを置き、常にスマホからさまざまなたくさんの情報を得ています。さらに色や光からの刺激が強い。

脳の情報処理には、3つの段階があります。情報を入れる「インプット」。次にデフォルト・モード・ネットワーク(脳の「内側前頭前野」「後帯状皮質」「楔前部(けつぜんぶ)」「下頭頂小葉」などで構成されている神経回路)による「整理」。そして、話すなどの「アウトプット」。
スマホを使用して情報が一方的にたくさん入ってくる状況だと情報を整理する役割を果たしている「デフォルト・モード・ネットワーク」が働かなくなり、脳が常に情報であふれ、散乱し、限界を越えてしまう。その結果、前頭前野が働きにくくなり、記憶や判断、抑制を司る認知機能が低下したり、うつ傾向になったりします。

そして何より、スマホは気づくと「ながら」をしてしまいがち。例えば、テレビを見ながらスマホをいじるとか、パソコンを立ち上げながらスマホをいじるとか、もしくは、スマホの中でもいろいろなアプリケーションを立ち上げて、同時並行でいろんなことを見たり聞いたり、物を書いたりとかできてしまいます。

これは「マルチタスク」といい、いろいろなことを同時並行にやっていることです。実は脳は、マルチタスクがとても苦手です。できれば1つのことに集中したいのに、いろいろなことを同時並行でやらなくてはならなくなり、脳にストレスがたまっていきます。常に脳はインプットを続けている状態となり、オーバーフローを起こしてしまいます。これが、スマホが私たちの脳に悪影響を与える脳過労の原因だと言われています。

これらの「脳疲労」や「認知機能の低下」を招かないためには、スマホを使わないようにするのがよいのでしょうが、それは現実的ではありません。ではどうすればよいのでしょうか? 

まず意識的にスマホを使わない&触らない時間を決める。たとえば布団の中では使わない、トイレの中では使わない、食事中はスマホを慎む、歩きスマホはもちろんしないなどなど。ぜひ今日からできる“スマホを使わない&触らない時間づくり”にチャレンジしてみてください。

また脳を休めるために、ぼーっとする時間を増やしたり、散歩やひなたぼっこをしたり、空や風や植物などの自然を多く感じたりするのもおすすめです。また呼吸瞑想などマインドフルネスの習慣も、脳疲労の予防には有効だと言われています。

『スマホ脳』によると、現代人は平均して1日2600回以上もスマホを触っているそうです。その現実を意識することから始めてみてはどうでしょうか? コロナ禍ではスマホは外界とのライフラインという一面もあります。ぜひ上手につきあっていきましょう。

次回は、「【不老脳 (10) 】何歳になっても鍛えられる脳 最新脳トレは機械で脳を計る!? 最新の脳トレについてお話します。

Text / 糸藤友子

リクルート→ベネッセ→ミズノを経て、50歳で脳科学ベンチャーへ。母の死をキッカケに健康寿命の延伸をミッションと決める。「人生は1回きりの旅である」から、いろいろな人と出会い、様々な体験をして、豊かに生きたいと願う。ベンチャーでは、脳を計りながら鍛える“最新”脳トレサービスを立ち上げ中。【Active Brain CLUB】https://www.active-brain-club.com/ 【ストレスマネージャー】https://www.neu-active-brain.com/stress-manager/

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