【再開】光の彫刻「あかり」150灯のインスタレーション“ノグチ空間”の体感型展示

緊急事態宣言で休館していた「イサム・ノグチ 発見の道」展東京都美術館)が、6月1日から再開しました。その様子をレポートします。
トップ画像:「あかり」インスタレーション

イサム・ノグチをご存知でしょうか? 1904年に日本人の父とアメリカ人の母の元に生まれ、コロンビア大学医学部に進学し、そこで野口英世に出会い、医師ではなく芸術家になるよう助言を受けて芸術の道に進みます。アメリカ人と日本人という2つのアイデンティティによる苦悩の時代を過ごしますが、やがて日本の伝統のかけがえない美に着目し、独自の彫刻哲学を打ち立てた20世紀を代表するアーティストです。野口英世との出会いがイサム・ノグチの人生を変えたとは、知りませんでした。そんなエピソードも本展で知ることができます。

さて本題です。本展は、「彫刻の宇宙」「かろみの世界」「石の庭」の3章構成になっています。

第1章「彫刻の宇宙」では、まず展示室の中心にある、150灯の「あかり」によるインスタレーションが大きな存在感を放ちます。ノグチは、1951年に岐阜提灯と出会い、この「あかり」シリーズの制作を始めたそうです。和紙と竹ひごで、組みあげた「あかり」は柔らかな光そのものを彫刻とし、30年以上にわたり200種類以上が制作されました。作品の原点は、幼少期の日本での体験で、この「あかり」に包み込まれることで、母親の子宮に戻る感覚を得るとノグチは言っています。15分のピッチでゆっくりと点滅を繰り返す「あかり」の中にたたずむと、不思議な安心感を得ることができます。子宮だからかもしれません。

「あかり」インスタレーション

第2章「かろみの世界」では、ノグチが切り絵や折り紙から発想を得て制作した金属板の彫刻などが展示されています。鮮やかな赤とユニークな形の遊具彫刻「プレイスカルプチュア」が飛び込んできます。ノグチは、日常生活の中にアートを持ち込む要素として、遊具をとらえ、世界中の子どもたちへ夢を託しました。ノグチが設計した遊具や作品は、日本各地の公園に設置されています(※)

《プレイスカルプチュア》 2021年 鋼鉄 茨城放送蔵

第3章「石の庭」は、香川県牟礼町にノグチが構えた住まい兼アトリエの庭に設置された彫刻の一部を展示しています。美術館で展示するのは、初めての試みだそうです。大小ふたつの石の組み合わせに見えるけれど、じつはひとつの石からできた作品は、見る位置でその姿は大きく変わります。これらの石彫群はノグチ芸術の到達点と言われています。

《フロアーロック(床石)》 1984年 イサム・ノグチ財団・庭園美術館(ニューヨーク)蔵(
公益財団法人イサム・ノグチ日本財団に永久貸与)©2021 The Isamu Noguchi Foundation and Garden Museum/ARS, NY/JASPAR, Tokyo E3713

「ご存知のとおり、私はさまざま迷いました。それは昔のことではない。これからも多くの展望が開かれているのです」。彫刻とは何かを求め続け、その「発見の道」に終わりはないとノグチは言いました。さまざまな発見の道を歩みながら、「彫刻とは何か」を追求したノグチの芸術の世界。世界と日本から、およそ90件の作品が集結し、圧倒的な見応えがありました。

「イサム・ノグチ 発見の道」展

場所:東京都美術館

会期:2021年8月29日(日)まで

休館日:月曜日

※ただし、7月26日(月)、8月2日(月)、8月9日(月・休)は開館

開室時間9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)

観覧料:一般 1,900円 / 大学生・専門学校生 1,300円 / 65歳以上 1,100円

詳細はこちら(https://isamunoguchi.exhibit.jp/

※札幌大通公園(北海道札幌市)、こどもの国(神奈川県横浜市)、駅前公園(島根県大田市)、一の宮公園(香川県観音寺市)、中央公園(香川県高松市)、山椒山公園(香川県高松市)、香椎浜北公園(福岡県福岡市)、万博記念公園(大阪府吹田市)など。

Text / 糸藤友子

リクルート→ベネッセ→ミズノを経て、50歳で脳科学ベンチャーへ。母の死をキッカケに健康寿命の延伸をミッションと決める。「人生は1回きりの旅である」から、いろいろな人と出会い、様々な体験をして、豊かに生きたいと願う。ベンチャーでは、脳を計りながら鍛える“最新”脳トレサービスを立ち上げ中。【Active Brain CLUB】https://www.active-brain-club.com/ 【ストレスマネージャー】https://www.neu-active-brain.com/stress-manager/

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