「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」4月9日まで

28歳で早世した天才画家エゴン・シーレ(1890年~1918年)の作品が30年ぶりに東京都美術館に集結しています。見る者の心に否応なく迫ってくる激烈な作品群で、高い人気を誇るエゴン・シーレ、《ほおずきの実のある自画像》《母と子》など、鮮烈な作品を味わうことができます。

エゴン・シーレ《ほおずきの実のある自画像》1912年 レオポルド美術館蔵

エゴン・シーレの代表作《ほおずきの実のある自画像》、決して画面は大きくないのですが、その迫力に惹き込まれます。自分を見つめ、自画像を描くことを通して自分とは何か、そのアイデンティティを探求し続けました。印象的な眼差しは、多感で繊細な感性を表しています。

こちらも有名な作品です。キリスト教絵画の伝統的な聖母子像をモチーフにし、悲しみにくれる母親と恐怖におののく子どもは、死への不安や恐怖に怯えているように見えます。

エゴン・シーレ《悲しみの女》1912年 レオポルド美術館蔵

描かれた女の肌は青白く、頬はこけ、大きな瞳は涙でうるんでいる。当時の恋人をモデルにした女性像の裏に怪しげな表情のエゴン・シーレの顔がのぞきます。不穏な描写に2人の複雑な関係が漂います。

その強烈な才能にあふれるこの3作品すべてを、若干22歳で描いています。

エゴン・シーレは世紀末のウィーンに生まれ、最年少の16歳でウィーンの美術学校に入学します。そのころ、ウィーン美術界の中心人物であったグスタフ・クリムトと知り合い、才能を認められます。「僕に才能はありますか?」とエゴン・シーレが問うと、「才能がある? それどころかありすぎる」とクリムトは答えたそう。1907年のふたりのやりとりです。

エゴン・シーレが鉛筆、チョーク、水彩などさまざまな技法を用いたドローイングで描く女性の裸体像もすてきで目が離せなくなりました。このあたりも見どころです。絵画作品ではなかなか見られない体勢の作品に、エゴン・シーレの独自性が際立ちます。

エゴン・シーレ《赤い靴下留めをして座る裸婦、後ろ姿》1914年 レオポルド美術館蔵


エゴン・シーレ《頭を下げてひざまずく女》1915年 レオポルド美術館蔵

1918年、エゴン・シーレは夫妻でスペイン風邪に倒れ、妻の死の3日後に28歳で亡くなります。展示会場の要所に掲示された彼のポートレートもとても印象的です。

エゴン・シーレの作品は50点、そして同時代にウィーンなどで活躍したクリムト、ゲルストル、モーザー、ココシュカらの作品が約70点、世紀末のウィーンで戦争や疫病で困難な時代のなか新しい表現に挑戦した人々の歩みを知ることができます。

レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才

会場:東京都美術館(台東区上野公園8-36)

会期:2023年1月26日(木)~2023年4月9日(日)休室日:月曜日

開室時間:9:30~17:30 金曜日は20:00まで(入室は閉室の30分前まで)

観覧料:一般 2,200円 大学生・専門学生 1,300円 65歳以上 1,500円 小・中・高校生・18歳以下は無料

詳しくは:https://www.egonschiele2023.jp/

Text / 糸藤友子

リクルート→ベネッセ→ミズノを経て、現在は脳科学ベンチャーで、脳の可能性を最大化するためのサービス開発(【Active Brain CLUB】https://www.active-brain-club.com/)などを担当。認知症の知識や予防の技術を学び「認知症予防専門士」と、発酵の原理・歴史・効果などを学び「発酵マイスター」の資格を取得。脳腸相関に基づき、脳活と腸活による健康寿命の延伸をミッションとして活動中。

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