オーストラリア・ケアンズへ 前編:野生にいる世界一危険な鳥と出会いに

2023年、3年ぶりの海外旅行はオーストラリア・ケアンズへ。ケアンズを選んだ理由は、ただ一つ。「世界一危険な鳥」と呼ばれる「ヒクイドリ(英名Cassowary)」を野生の状態で見てみたいということ。ヒクイドリは、ダチョウやエミュのように大型の飛べない鳥です。ヒクイドリ目ヒクイドリ科ヒクイドリ属。オーストラリア北東部・パプアニューギニアに生息しています。日本国内でも東武動物公園(埼玉県)や福岡市動植物園(福岡県)などいくつかの動物園で飼育されています。

10年ほど前、オーストラリア北東部で野生のヒクイドリを探すNHKの番組を見て以来、「いつか野生のヒクイドリを見てみたいな」と漠然とした思いがあり、今回の旅を計画しました。ただ相手は野生生物。広大な熱帯雨林の中で偶然に遭遇ことはほぼ不可能。ネットを検索して目撃情報をチェックしたり、日本から探しに行ったことがある人のブログなどを読んで、目的地はケアンズから約110キロ離れたビーチ、エティーベイ(Etty Bay)と定めました。

ヒクイドリのその外観はかなり驚いてしまうもの。全高は130-170センチ、体重は30-60kgにもなります。体全体は人の髪の毛のような黒い羽毛に覆われていて、長い2本の脚先には鋭い爪。頭頂部には板のようなトサカ、鋭い嘴、顔から首は水色から青のグラデーション、喉の部分には真っ赤なヒダがあり、「まるで火を食べているようだ」ということで「ヒクイドリ」と呼ばれています。近年、恐竜と鳥類の共通点が指摘されていますが、ヒクイドリを見ると「恐竜みたい」という印象を持つ人が多いようです。生息している熱帯雨林の消失、そして交通事故に遭う個体も跡を絶たず、個体数の減少が問題になっています。木の実を食べて、排泄することで、森林を増やす役目も果たしているのに、残念なことです。

ケアンズからの幹線道路をレンタカーで走ること1時間半。幹線道路を外れて熱帯雨林の保護地域に向かう山道に入っていくと、「ヒクイドリ注意」の標識を何度も見かけます。道路に突然出てくることもあるのでしょう。

エティーベイビーチに到着。ビーチ脇の駐車場に車を停めました。海で泳いでいる人、浜辺でのんびりしている人、家族連れも多いですね。飲み物やアイスを売っている売店があったので、お店の人から情報を得ようと向かうと…

…な、なんと!

売店前のテラス席のウッドデッキにヒクイドリが座っているではないですか!しかも赤ちゃんも一緒です。子育て中の野生生物は危険ですし、そもそもヒクイドリは「世界で一番危険な鳥」と言われているのですから、接近しすぎは厳禁。距離をとりながら、さまざまな場所から写真や動画撮影をします。


「お母さんと赤ちゃん」などと思いながら観察していたのですが、なんと、メスは卵を産んだらどこかに行ってしまい、オスが子育てをするとのこと。これはお父さんなのですね。赤ちゃんは薄茶色で毛並みも柔らかそう。ぴいぴいと可愛い声でよく鳴いています。お父さんはなんだか眠たそうです。

何年間も野生の姿を見てみたかったヒクイドリに、いとも簡単に会えてしまい、目の前の光景が信じられません。大興奮でいろいろな角度から観察しました。夕方になってきて、ビーチで遊んでいた人たちも帰り支度を始めました。売店でアイスクリームでも買ってひと息入れようかと思いヒクイドリから離れたら、その間に親子はいなくなっていました。熱帯雨林のジャングルに帰って行ったようです。派手な色のヒクイドリですが、森の中に入ると深い緑と馴染んでしまうようで、どこにいるのかさっぱりわからなくなってしまいました。

ケアンズに戻る途中でも、再び別のヒクイドリの親子に遭遇しました(トップ画像)。エティーベイから2-3キロ内陸に入り標高200mぐらいの山中の道路を走行していると、道路脇にヒクイドリの赤ちゃんを発見。先ほどのビーチで見た赤ちゃんより一回り大きいようです。車を停めて道路の反対側から観察していると、お父さんが森からぬっと出てきました。山の景色を背景にのっそりのっそり歩く親子のヒクイドリは実に絵になります。事前のネット等の検索では親子を見かけたという話はなく、成鳥単体の目撃情報ばかり。一説には、卵から成鳥になる確率は1%以下という話もあり、親子連れ、しかも二組も出会えた私は本当にラッキーでした。

*早々と世界一危険な鳥ヒクイドリに遭遇してしまった真里さん。後編ではたった3日の滞在なのに、空に?海に山にケアンズを堪能する真里流トリップをご案内いただきます。

Text /トラベルアクティビスト真里

世界中、好奇心を刺激する国々を駆け巡るトラベルアクティビスト。外資系金融機関に勤務の後、1年の3分の1は旅をする生活へ。ジョージア、バルト3国はじめ訪れた国は50カ国以上。日本中も巡り、行った先で出会った人、風景、食etc. 旅の醍醐味をレポートします。


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