北野天満宮で献茶祭があり、その協賛席である菓匠会の展示を見に行きました。今年のテーマは「暖」。さて、どんな京菓子が登場するのでしょうか。
12月1日に北野天満宮で献茶祭が行われました。菓匠会の協賛席はコロナ禍で中止になったり、来客の数を絞ったりが続いていましたが、今回は久しぶりに通常の形に戻りました。
今年のテーマは「暖」。
たき火や火鉢、ストーブ、こたつなど暖かさをイメージする京菓子はなかなか店頭では観ることが出来ません。
こういう展示で職人さんたちが思いっきり想像力を膨らませた作品を観られるのも北野さんでの楽しみのひとつです。
では、どんどん観ていきましょう。
最初のメイン写真は、京都市役所前にお店を構える亀屋良永さん。
タイトルの「手をかざし」通り、思わず手をかざしたくなります。
人気銘菓の御池煎餅らしきものも見えますね。火鉢のザラメも面白いです。
こちらは四条堀川にお店を構える亀屋良長さんの「風花」。風花とは、晴天時に雪が風に舞うようにちらちらと降ること。
雪の意匠が可愛らしいですね。
四条祇園の鍵善良房さんです。「冬の夜」。
一筋の透き通った部分に暖かい灯りが。灯りのグラデーションもまた美しいですね。
冬の夜咄にぴったりなイメージですが、それ以外にも色んなイメージが掻き立てられる作品ですね。
こちらは二条城の東にある二條若狭屋さんの「離宮の朝」。
いつも思うのですが、二條若狭屋さんの華やかで上品な花の色合いは本当に「はんなり」して美しいですね。代々大切にされている木型に乗せたこの椿のロマンチックな美しさ、ずっと心に残りました。
西陣は晴明神社近くにお店を構える塩芳軒さん。
作品名「熾火」(おきび)とは、着火した薪や炭が炎を上げずに芯の部分が真っ赤に燃えている状態のことです。炎は上がっていませんが、非常に高温で火力が安定していることから調理や茶道、キャンプなどにもよく使われますね
茶道で見かける少し灰をかぶった炭が「いこる」シーンに静かな“暖”を感じました。
今出川通りに面してお店を構える本家玉壽軒さんは、クリスマスにちなんだ暖かさを表現。サンタさんのぽっこりしたお腹が絶妙で、優しい人柄にも温かみを感じます。
御所の南西にお店を構える亀廣保さんの作品「もうすぐ」。
高温の飴生地を細工に仕上げる有平糖(あるへいとう)が美しいですね。真冬の暖ではなく、春を待つ。
こういう暖かさもあるのだなと最後に気づかされる作品でした。
季節を感じ、想像力をかき立ててくれる京菓子。
そんな京菓子が近くにある有り難さを実感する一日となりました。
帰り道は、北野天満宮で終わりが近づいた御土居の紅葉を観て帰りました。
Text /倉松知さと
関西在住。キャスター、歴史番組制作、京都情報ポッドキャスト制作などを担当後、京都・歴史ライターへ転向。歴史ガイドブック『本当は怖い京都の話』(彩図社)ほか、雑誌で歴史エッセイを連載中。京都、歴史ジャンルでのラジオ、テレビ出演、講演なども。日本旅行作家協会会員。