京LIFE:半世紀ぶりのフロア全面改装~京都の食を支える百貨店レストラン街の挑戦 

約50年ぶりに8階レストランフロアを一新した大丸京都店。西日本初出店や関西の人気店など全8店舗では「義商・大丸」だからこその新システムにより京都中の新鮮な食材が楽しめるようになりました。

大丸の創業は古く、約300年前の江戸中期1717(享保2)年。京都・伏見で開いた古着商が始まりです。

丁稚小僧のデッチーくん

店のモットーは先義後利、つまりお客様を第一に徹すれば、利益は自ずと後からついてくる。とは商いにおける正しい道、世間のために尽くす公共心を意味しました。

そんな経営理念から先々で信頼を得た大丸は、あの幕末の大塩平八郎の乱では「大丸は義商なり。犯すべからず。」と、大丸だけは乱に巻き込んではならぬと大塩に言わしめたほど。また、新選組の土方歳三が「京都の大丸で隊士お揃いのだんだら羽織を誂えた」というエピソードが残るほど、人々からの信頼は厚く、町から愛され一目置かれる存在でした。

その大丸京都店が約50年ぶりにリニューアルした8階レストランフロアには、先義後利の精神がしっかりと受け継がれていました。
先義後利スピリッツを体感しに入ったのが京都で野菜を美味しく食べられる人気店五十家グループの新店舗「VEGGIE ISO TERRACE(ベジイソテラス)」です。


新鮮な京野菜のお店 VEGGIE ISO TERRACE
京都の野菜がたっぷり楽しめるランチメニュー
近郊で採れた野菜のデリ

ランチメニューではコースによって、京都で採れた野菜を使ったデリを選び、さらに肉や魚のメイン、朝採り野菜のサラダ、野菜スープ、ご飯(玄米もある)かパンを選べます。

開放的なテラス席でランチをいただく

自由なチョイスで自然に彩り豊かなプレートになりました。

ここで注目したいのが、選んだデリに使われた食材、京都府北部の丹後町で生産された「乗原(のんばら)こんにゃく」。生産数が限られていて京都市内ではなかなか手に入らなかった幻のこんにゃくです。

丹後町 乗原(のんばら)こんにゃくを使ったデリ

乗原地区は日本海に面する京都府最北の町。大正時代からこの地区で作られてきた生芋100%の手作りこんにゃくは生芋を皮付きで丸ごと使うため、繊維質が壊れず野趣に富み、茹でるとプリッと弾力のあるしっかりした食感が特徴です。また、人の手で練ることで小さな気泡が入り、味が染みこみやすいという利点もありますが、手間暇がかかるため、今ではたった1軒しか作っておらずその存続も危うい状況でした。

そんな諸問題を抱えた食材は実は京都府内には他にもあり、第一次産業従事者の高齢化、年々上がる輸送コスト(特に京都府北部地域)、僻地の生産者と街の消費者とをつなぐ調達システムなど課題が山積していました。

そこで立ち上がったのが大丸京都店でした。

京都府内には豊かな食材がいっぱい!

「京都の料理が古来美味しいのは山城、丹波、丹後など都の周辺から優れた食材が集められたから。自分たちがその間に立って京都の食文化を支えて行くことはできないだろうか。」

京都府にも掛け合い賛同を得た結果、まず京都の契約農家の食材をメインに扱う食品卸業者「ミナト」(京都市南区)と業務提携し、京都大丸専用のトラックを京都府内の隅々まで走らせ、各地の契約農家から産地直送された野菜や果物、肉類、魚介類を定期的に大丸京都店に運び、レストラン街各店で使用するという新調達システムを確立したのです。

安定した契約を得たことで、乗原こんにゃくは若い世代のUターン就職にもつながったとか。

こうして希少な丹後の「乗原こんにゃく」がVEGGIE ISO TERRACEで味わえたり、「丹波のジャージー牛乳」も8階レストラン街の丸福珈琲店ザ・パーラーにてソフトクリームやカフェオレなどの形で味わうことが出来るようになりました。

また、地元でしかあまり見かけない珍しい魚や肉、野菜なども身近な食材となり、各店の料理人たちに刺激を与えています。

「そのうち、京都市内の料理人の皆さんにも大丸京都店に食材を求めに来て欲しいですね。」と話すのは営業3部部長の今井良祐さん。確かに食材の豊富さで、そのうちあの錦市場を超えるかも知れません!
「地元に支えていただいてきた大丸なので、恩返ししながら、これからも皆さんと一緒に京都を大事にしていきたい、そんな店でありたいですね。」

自分たちは地元京都とともに歩むという意識を強く持ってらっしゃるんだなぁと感じました。

また、取材にうかがった日は、創業者下村彦右衛門正啓を祀る神社で社員による月次祭が行われていて、創業者の先義後利精神をしっかり受け継ぐ姿勢がこんなことからもうかがえました。

VEGGIE ISO TERRACEの開放的なテラス席は、冬場はストーブを焚いて暖かさを確保しています。ここでは手軽にBBQも出来るそうですよ。しかも、このお店はなんと夜11時までオープン。8階のその他のお店も夜10時まで楽しめます。

京都中の選りすぐりの食材が集まり新たな食文化を発信する大丸京都店の新しいレストラン街。ぜひ味わいに来て下さい!

VEGGIE ISO TERRACE (ベジ イソ テラス)
電話 075(211)5000
営業時間 11:00~23:00(LO(フード):22:00)(LO(ドリンク)22:30)

https://www.daimaru.co.jp/kyoto/restaurant/veggie_iso_terrace.html

大丸京都店 
電話075(211)8111
https://www.daimaru.co.jp/kyoto/

大丸京都店 8階レストランフロア https://www.daimaru.co.jp/kyoto/restaurant_floor_open/

Text /倉松知さと 

関西在住。キャスター、歴史番組制作、京都情報ポッドキャスト制作などを担当後、京都・歴史ライターへ転向。歴史ガイドブック『本当は怖い京都の話』(彩図社)ほか、雑誌で歴史エッセイを連載中。京都、歴史ジャンルでのラジオ、テレビ出演、講演なども。日本旅行作家協会会員。

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