キース・ヘリングの大規模展開催 驚きのサブウェイ・ドローイング含む約150点

明るくてポップな作品が多いキース・ヘリング。その作品を目にしたことがない人はいないのではないでしょうか?アーティストとしての活動はわずか10年ほどですが、多くの作品を残しています。その中から約150点が集結、六本木・森アーツギャラリーで展覧会「キース・ヘリング展 アートをストリートへ」が開幕しました。

今回の目玉は、「サブウェイ・ドローイング(Subway Drawing)」。黒い紙に白いチョークで描かれた作品7点が、会場に入ってすぐのスペースに展示されています。このアートの誕生のきっかけは、キースが故郷ペンシルベニア州から美大入学のためにニューヨークに出てきて、毎日地下鉄乗ってアルバイトに出かけていた時のこと。広告が決まっていない空きスペースに黒い紙貼ってあるのを見た時、「ここに何か描いたら、たくさんの人に見てもらえるはず!」。グラフティー全盛期の1980年代のニューヨークでも、勝手な落書きはもちろんNG。乗務員や駅員に見つからないよう、わずか3-4分で描き上げたそうです。こうしたキースの試みは5年間ほど続きましたが、ニューヨークの人々にとって毎日にどこに描かれるかわからないサブウェイ・ドローイングを見つけることが楽しみとなっていき、だんだんと話題になっていきました。のちに残すために描いたものではない上に、新しい広告が決まると処分されてしまいますから、現存点数が少なく大変貴重なものです。

キース・ヘリングは社会へのメッセージを送るためにポスターを使いました。テーマは、核放棄、反アパルトヘイト、HIV・エイズ予防など社会的なものもありますし、スウォッチとのコラボレーション広告もあります。中でも私が惹かれたのは、「楽しさで頭をいっぱいにしよう!本をよもう!(Fill Your Head with Fun! Start Reading!)」(1988年 中村キース・ヘリング美術館蔵)という作品。1988年にニューヨーク公共図書館の依頼で識字率向上のために制作されたものです。嬉しそうな表情をしている人間の頭の中には、何やらごちゃごちゃと、おもちゃ箱のようにいろいろなものが詰まっています。ひとつひとつのアイテムをじっくり見ると、ユーモラスで口元が緩んで笑顔になってしまうようなものばかりです。この作品には“本を読むとワクワクすることが頭の中にたくさん入ってくるよ“というメッセージが込められています。ニューヨークは”人種のるつぼ“。移民などで多様な人種・民族が住んでいますが、英語の取得が課題と言う人々も多く、言語に不自由があると日常生活が困難であるばかりではなく、コミュニティからの疎外など多くの問題が起こります。文字を使わない明るくシンプルなキースのビジュアル・メッセージは、「本を読んでみようよ」「英語を取得して、コミュニケーション取れるようになるともっと楽しいよ」と多くの人々の心にストレートに届いたのではないでしょうか。

「アートはみんなのために」という信念のもと作品を作り続けたキース。《赤と青の物語》(1989年 中村キース・ヘリング美術館蔵)は子どもたちのために作られた20枚からなるシリーズです。赤・青の原色を使った絵画のつながりから1つのストーリーを想像する仕掛けになっています。子どもだけでなく大人にも訴えかけるものです。アメリカの学校やこども美術館が物語創作コンテストで使用するなど、教育プログラムにも取り入れられています。同じ展示室には、平面の形を立体に立ち上げた彫刻作品もあります。これらの作品は、子どもを含む多くの人々に作品に触れてもらうように世界中の公園や小児病院数十ヵ所に寄贈されており、多くの人々に親しまれているものです。

会場の最終エリアでは、キースと日本のつながりについての展示があります。キースの初来日は1983年。バブル景気に湧いていた日本は、未来都市と伝統が融合した興味深い街としてキースの目に映ったようです。「東京ってところはほんとうにすごい。まるで大きな遊園地のようだ。」と言う言葉を残しています。表参道の路上でのドローイングの様子を撮った写真も興味深いです。キースがデザインしたグッズを売るポップショップがあったことも、私にとっては懐かしく思い出されました。マグカップやTシャツなど身近なものを購入することでアートとの距離を近づけてほしい気持ちであったのだと思います。「アートは富裕層のものだけではない」と言う一貫した姿勢が見受けられます。

31歳でエイズ合併症により早逝したキース・ヘリング。亡くなる最後の最後まで取り組んでいた作品は《イコンズ》(1990年 中村キース・ヘリング美術館蔵)。いろいろな作品の中で何度も描かれているハイハイする赤ちゃんのモチーフです。未来への希望・純粋無垢というキースの理想を込められています。

アーティストとしての約10年間の全てが観られる展覧会です。ぜひ会場に足をお運び、キース・ヘリングの世界を楽しんでください。

All Keith Haring Artwork ©Keith Haring Foundation


キース・ヘリング展 アートをストリートへ

会期:2023年12月9日~2024年2月25日
会場:森アーツセンターギャラリー
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階

開館時間:10:00〜19:00(金土〜20:00、12月31日~1月3日は11:00~18:00)※入場は閉館の30分前まで ※事前予約制(日時指定券)

休館日:会期中無休
料金:一般 2200円 / 中学・高校生 1700円 / 小学生 700円

Text /トラベルアクティビスト真里

世界中、好奇心を刺激する国々を駆け巡るトラベルアクティビスト。外資系金融機関に勤務の後、1年の3分の1は旅をする生活へ。ジョージア、バルト3国はじめ訪れた国は50カ国以上。日本中も巡り、行った先で出会った人、風景、食etc. 旅の醍醐味をレポートします。

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