100本目の記念寄稿は 遥かなる「南極への旅」その1

W LIFE がスタートした時からご寄稿いただいている「トラベルアクティビスト真里」さんの記念すべき100本目の寄稿はなんと「南極への旅」です。

「旅に出たいのに出られない」というコロナ禍を経て私が至った結論は、「どんなに遠くても行きたい場所から先に行こう」ということ。私にとって、それは「南極」。そんな思いで、約1年前、南極行きを決意しました。日本では南極旅行に行く人は年間200~300人程度。一方、世界中から南極に来る観光客はなんと年間10万人!世界的には、南極旅行は必ずしも特別なことではないようです、さまざまな国の多くのクルーズ船が南極行きのツアーを数多く組んでおり、どれを選んだらいいのかわかりませんでした。そんな時、2023年お正月、人気テレビ番組TBS系「マツコの知らない世界」で二週に渡ってクルーズ船の特集が組まれたのです。

特に2022年に就航したばかりのフランス・ポナン社所有「Le Commandant Charcot ル コマンダン シャルコー号」の南極への航海の様子を紹介していました。数あるクルーズ船の中で唯一の砕氷船であるシャルコー号。その能力を最大限に活かして、通常のクルーズ船では航行が難しいルートを進み、辿り着けないエリアに行くことができるというのです。フランス風のおしゃれなバカンススタイル、五つ星ホテル並みの快適な客室、そして南極で行う数々のアクティビティ。すっかり心を鷲掴みにされ、「この船で南極に行こう!」と決めました。

サンチアゴ市内

私が申し込んだル コマンダン シャルコー号の南極クルーズは「The Emperor Penguins of Weddell Sea ウェッデル海のコウテイペンギン」と名付けられた15日間のコース。11月3日チリの最南端の港町プンタ・アレーナスを出発します。丸い南極大陸から南米大陸の先端に向かって尻尾のように細長く飛び出ている南極半島。多くのクルーズ船は南極半島の西側のエリアで活動していますが、砕氷船であるシャルコー号は南極半島の東側、氷が分厚いウェッデル海で活動できる唯一のクルーズ船。そしてこのウェッデル海はコウテイペンギンのコロニーがあるのです。世界最大のペンギンであるコウテイペンギンを南極で見てみたい! 2023年11月2日にチリの首都・サンチアゴのホテルに集合とのこと。フライトの欠航や荷物のロストなど様々なリスクを考慮して、集合日より数日前にサンチアゴに到着するスケジュールにしました。

10月29日夕刻に羽田からアメリカン航空に搭乗、ダラス/フォートワース空港まで約12時間。同じくアメリカン航空サンチアゴ行きに乗り換えて、さらに10時間のフライト。日付が変わって10月30日にサンチアゴ空港に到着しました。5000m級のアンデス山脈が見えるサンチアゴの街は、南米で一番古い教会がある旧市街・南米で一番高いビルがある新市街と、とても落ち着いていて素敵な街でした。ワインの名産地へも車で一時間ほどで行けるので、南極クルーズまでの数日はサンチアゴとその周辺の観光をして過ごしました。この時の様子はまた別な機会にご報告したいと思います。

いよいよ集合日の11月2日。この日のディナーは、ホテルのバンケットルームに200名近い乗船予定者が一同に集まり、コース料理を頂きました。私が座ったテーブルは、50代ぐらいと思われるフランス人女性二人組、一人で参加の30代のイギリス人女性、イギリス在住の中国系のご夫妻とテーブルを共にしました。フランス人・イギリス人女性たちは私と同じく初めての南極ということだったのですが、中国系ご夫婦はなんと3回目!しかし、もちろんですが、2022年に就航したばかりのシャルコー号に乗るのは初めてだそう。最初に話したこの方達とは、航海中何度も親しくお話しすることになりました。

11月3日、早朝。ホテルをチェックアウトして、空港に向かいます。チャーター機でチリの最南端の街プンタ・アレーナスまで3時間のフライトです。着陸態勢に入り、高度を落としていくと、雪を被ったアンデス山脈が見えてきます。気温が20度ぐらいだった首都サンチアゴと違って、緯度が高いせいで気温が低く10度ほど。空港にはバスが待っており、そのまま港へ。乗船するル コマンダン シャルコー号が見えてきました!

いよいよ乗船です。船の入り口には、船長をはじめ、クルーが出迎えてくれます。チェックインはシャンパーニュを飲みながら。さすがフランス船籍のシャルコー号です。優雅な気分。

船は9階建て。5階にはフランス料理界の巨匠アラン・デュカス監修のレストラン、そしてラウンジ。9階の最上階には、ビュッフェ形式のレストラン、展望が良いラウンジ、ジム、SPAなどがあります。SPAにはサウナやクールダウンするための雪が詰まっているスノールームもあります。レストランやラウンジで提供される食事や飲み物はオールインクルーシブ。シャンパーニュやワインもカクテルも、いつでも飲み放題です!

お部屋は、20平米から94平米のスイートルームまで、7つのカテゴリーに分かれています。私が申し込んでいたお部屋は、上から三番目、42㎡の「Grand Prestige Suite」。お部屋にはベッドが2台、ソファセット、バスルームにはシャワールームとバスタブ。そして部屋の入り口近くにも独立したお手洗いが。ウオークインクローゼットも十分すぎる広さです。テラスも付いていて、部屋から外に出ればすぐに景色を堪能することができます。そして、お部屋付きのバトラーもいて、飲み物を持ってきてくれたりするだけでなく、スパの予約などいろいろお願いできます。

夕刻、シアターと呼ばれるホールに乗客全員集合しました。船長のご挨拶。船長は、日本だと南極観測船「しらせ」に相当するフランスの南極観測船で10数年間に渡り船長を勤めてきた方。極地探検のスペシャリストです。そのまま、全員で避難訓練。乗員・乗客全員が乗り込める数の救命艇が備え付けてあり、万が一の時に自分が集合するエリアを確認しました。

南緯53度のパタゴニア、夕食が終わってもまだ明るく、そんな中いよいよ出航です。南極に到達するまで船で2日間。その間に「絶叫する60度」と呼ばれる「ドレーク海峡」の荒波の中を進むはず。気分が悪くなってベッドから起き上がれない人も多いと聞きます。果たして、無事に南極まで辿り着けるのでしょうか!? 
その2は来月にお届けします。お楽しみに !




Text /トラベルアクティビスト真里

世界中、好奇心を刺激する国々を駆け巡るトラベルアクティビスト。外資系金融機関に勤務の後、1年の3分の1は旅をする生活へ。ジョージア、バルト3国はじめ訪れた国は50カ国以上。日本中も巡り、行った先で出会った人、風景、食etc. 旅の醍醐味をレポートします。

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