西洋と東洋の美の調和を目指したヴェネツィアン・グラス作家 大平洋一 国内初の大回顧展 in 富山

伝統と歴史あるイタリアのヴェネツィアン・グラスの世界に単身飛び込み、約40年ものあいだ現地で活動したガラス作家 大平洋一氏。日本国内での展覧会は大変貴重な機会だといえます。
top写真:《春の目覚め》2002年 Collection of Mr. & Mrs. Hervé Aaron, New York 撮影: Francesco Ferruzzi

ガラス作家・大平洋一(おおひら・よういち)氏は、1946年、東京生まれ。
学生時代に五木寛之氏の小説『霧のカレリア』を読んでガラスの世界に魅了され、1973年、作家を目指して26歳でイタリアに渡りました。

《ゴブレット”野いちご”》1994年、富山市ガラス美術館蔵  撮影:斎城卓 

そして、ヴェネツィアの国立美術アカデミー、アカデミア・ディ・ベッレ・アルティ彫刻科を卒業後、ガラス職人の島として有名なヴェネツィアのムラーノ島の工房でデザイナーに就任し、オリジナルのデザインを現地のマエストロたちと一緒に作品として創り上げていきました。

その後、約40年にわたり現地ムラーノ島を中心に活動し、彼の作品は世界中の名だたる美術館やコレクターから愛されています。

その一例を挙げますと・・・イタリアはもちろんのこと、アメリカのメトロポリタン美術館やボストン美術館、フランスのパリ装飾美術館、ドイツのデュッセルドルフ美術館、スイスのローザンヌ美術館などなど・・・。

《クリスタッロ・ソンメルソN.49-彫刻》2008年  Collection Barry Friedman, New York

大平氏はずっと海外中心で活動していたため、日本で彼を知る人は逆に少ないかも知れません。国内で彼の作品を見られる場所も限られていました。
それでも東京の百貨店で個展が開かれた際には、渡伊のきっかけとなった作家・五木寛之さんから大きな白い小手毬の花を贈られたこともあるようです。

国内でなかなか目にすることのできなかった大平作品ですが、今回、富山市ガラス美術館で開かれる展覧会では世界の個人コレクター所蔵の作品も含め、約150点が一堂に集まるとても貴重な展覧会となっています。

(左)《モザイク・ガラス「輪」》1996年、 (右)《モザイク小ガラス瓶「謝肉祭のマント」》1996年  富山市ガラス美術館蔵 
撮影:末正真礼生  

 

 

大平氏はローマ時代のモザイク・ガラスに着想を得ながら、東アジア圏にみられる陶磁器や漆器の美しさを融合させていきました。
また、透明なガラスと不透明なガラスとを巧みに組み合わせオリジナルの境地を開いていきました。

《雨の日》 2008年 Collection Giulio Alessandri, Venice

 作品を見ていると、どことなく日本の漆芸作品の雰囲気が漂っていたり、ガラスなのにまるで茶道具にみられる陶器のような美しさを想起させるのは、おそらく彼が西洋の美とそうした日本の美を融合させたからなのでしょう。

 500年以上の歴史を誇るヴェネツィアン・グラスの華やかな世界観に日本人だからこその着想を交えた作品には、どこかオリエンタルな香りも漂い、この独特の作風が世界中の人々を魅了したのかも知れません。

★写真⑤ 《ヴェネツィアの運河 N.3》 2009年 Collection Barry Friedman, New York

 大平氏は学術的にヴェネツィアン・グラスを研究することにも情熱を注ぎ、その資料のコレクションも必見です。

中でも世界最古のガラス技法書『「ラルテ・ヴェトラリア(ガラス製造術)」の初版本は、国外流出を防いできたヴェネツィアのガラス秘術が国外に流出するきっかけになったともいわれる歴史的価値の高いもので、世界中を探してもなかなかお目にかかれない貴重な書です。

 2010年末の帰国後に大平氏が東京の町田市博物館に寄贈したヴェネツィアン・グラス関係の貴重な資料も今回、富山で展示されます。

幸いなことに、私は生前の大平氏にお目にかかったことがあります。

大平氏はとても穏やかで細やかな心配りをされる、まさにジェントルマンという印象の方でした。

アーティストというと気難しいのかな、近寄りがたいのかなと思いきや、大変温かみのある方で、私のような若造(当時)にもとても丁寧に優しく対応してくださったことを覚えています。2022年の突然の逝去は、ご本人も思いもしなかったことでしょう。まだまだガラス界のためにも活動し、今後は国内にご自身の作品を見られる場所も作ろうとしていた矢先とも聞いています。

 それ故、今回の大回顧展は大平氏の夢が叶う形で開かれる展覧会ともいえるでしょう。

富山市ガラス美術館が入る隈研吾が設計を手がけたTOYAMAキラリ

 今年1月の能登半島地震では富山市内も一部、被害を受けましたが、会場である富山市ガラス美術館は現在、通常通り開館しています。 富山市ガラス美術館自体が入る建物『TOYAMAキラリ』も世界的な建築家・隈研吾氏が手がけた設計とあって、圧巻の外観です。

3月23日(土)、4月20日(土)、5月25日(土)、6月22日(土)には、各回午後2時から、学芸員によるギャラリートークも予定されています。また、5月18日(土)には午後2時から、富山市ガラス美術館の館長 土田ルリ子さんによるスペシャルトークも開催予定です。大平洋一氏の人物像などについて、詳しくスライドなどで紹介されるそうです。

3月16日(土)には北陸新幹線(金沢~敦賀間)が開業します。

 また、能登半島地震により観光需要が落ち込んでいる北陸4県を支援するため、旅行代金の最大半額を補助する「北陸応援割」や富山県独自の旅行支援クーポンも予定されています。

 ぜひこの機会に富山市へお運びください。 

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回顧展 大平洋一 ヴェネツィアン・グラスの彼方へ
https://toyama-glass-art-museum.jp/exhibition/exhibition-5873/

会期:2024年3月9日(土)~2024年6月23日(日)
開場時間:午前9時30分~午後6時(金・土曜日は午後8時まで。入場は閉館の30分前まで)
閉場日:第1・3水曜日、3/27、5/8(ただし3/20、5/1は開場)
会場:富山市ガラス美術館 2・3階 展示室1-3

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Text / 倉松知さと 

関西在住。キャスター、歴史番組制作、京都情報ポッドキャスト制作などを担当後、京都・歴史ライターへ転向。

歴史ガイドブック『本当は怖い京都の話』(彩図社)ほか、雑誌で歴史エッセイを連載中。

京都、歴史ジャンルでのラジオ、テレビ出演、講演なども。日本旅行作家協会会員。国際京都学協会会員。

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