レストランガイド『ゴ・エ・ミヨ 2024』
授賞式 ハイライト

数あるレストランガイドや評価サイトの中でも、料理人や生産者から多くの支持を集める『ゴ・エ・ミヨ』。1972年に二人のフランス人ジャーナリスト、アンリ・ゴとクリスチャン・ミヨがパリで発刊したのが始まりです。現在15カ国で展開しており、日本はアジア地域唯一の展開国となっています。「予約から見送りまで」を共通の定められた基準をもとに評価しているのが特徴。フランス語の「テロワール」、つまり“土地”や“地域性”に注目していますので、各地方の特色を持ったレストランが紹介されています。私も旅先での食事を決める際に、頼りにしているレストランガイドです。〈今年のシェフ賞〉をはじめ、〈明日のグランシェフ賞〉〈期待の若手シェフ賞〉〈ベストソムリエ賞〉〈ベストサービス・ホスピタリティ賞〉など10の賞が設けられており、若手シェフや地方の名店の発掘、ソムリエやサービス担当者や生産者にも光を当てています。レストランの料理を単に点数で評価するだけでなく、レストランという舞台を支えるプロフェッショナルに寄り添う姿勢が感じられます。

3月19日、日本版第8号『ゴ・エ・ミヨ2024』が発刊されました。昨年新たに加わった東北地方を含めた全国版として2刊目、47都道府県532店舗が掲載されています。それを記念する授賞式&ガラ・パーティーが東京・パレスホテルで行われました。会場には500人以上ものシェフ・生産者が全国から一堂に会し、華やかな雰囲気です。コロナ禍のためこの数年はこのように集まる機会がありませんでしたので、お互いのお店の『ゴ・エ・ミヨ』への掲載を讃えあい、再会を喜びあうシェフたちの輪がそこここに。超有名シェフの前には、ご挨拶をしたい若手シェフたちの長い列ができていました。

「ジョエル・ロブション」総料理長・関谷健一朗氏

10の賞の中から何名かのシェフ・生産者をご紹介します。〈今年のシェフ賞〉は、東京・恵比寿「ジョエル・ロブション」総料理長・関谷健一朗氏。2023年には、日本人として初めて、料理部門の「フランス国家最優秀職人章(M.O.F.)を日本のみならずアジア初で受賞されました。M.O.F.のメダルを赤・白・青のトリコロールのリボンで首にかけて壇上に上がられた関谷シェフ。「22歳で渡仏した時に、初めて手に取ったゴ・エ・ミヨには一流店の憧れのシェフたち掲載されていました。日本でも発刊され、自分が〈今年のシェフ賞〉を受賞することになるとはその時には思いもしませんでした。憧れだけで『ゴ・エ・ミヨ』を見ている若いシェフもいると思いますが、何事も決して諦めることなく、自分が信じていることを続けてください。私ができることがあればサポートしていきたい」と、ご自身のキャリアを重ねつつ、後進を励ますスピーチをされました。

「syn」大野尚斗氏

〈期待の若手シェフ賞〉は3名のシェフが受賞されましたが、その中でも、福岡「syn」大野尚斗氏を私は何年も注目してきました。福岡生まれの大野シェフは、ニューヨーク州にある料理大学「カリナリー・インスティチュート・オブ・アメリカ」(略称CIA)を卒業後、ニューヨーク「ザ・ノマド」、シカゴ「アリニア」など世界のレストランでの経験を積んできた方です。ご自身が大変な旅好き。世界各地のレストランに出向いては食事をし、またそこで働き、現地の食材・調理法・文化を吸収してきました「旅する料理人」です。昨年福岡にオープンした自身のお店「Syn」は、「旅」がテーマ。大野シェフが世界中で得た経験を元に作られたお料理が次々と供され、コースを食べ終わる頃にはゲストは世界旅行に連れて行ってもらったような気分になります。「世界中からこの小さなレストランに来てくださるお客様にとって、“想い出の旅の軌跡”になるようなお店を目指します」と受賞の喜びを表されていました。

長谷川博紀氏(右)

地方の特徴ある料理や食材に注目した〈テロワール賞〉を受賞した2名のうちお一人は、生産者の長谷川博紀氏。有名店のシェフが購入したいと熱望するアスパラガスを北海道で作られています。私も、長谷川さんのアスパラの大ファン。毎年その季節になると、いくつかの行きつけのレストランで「長谷川さんのアスパラが入っていますよ」と聞くと、「今年も食べられる!」と大喜びしています。甘みがありつつも力強い味、アスパラ特有の苦味はほとんどありません。「就農して13年になります。調理してくださるシェフの皆様、何か特別の機会かもしれない時に食べてくださるお客様のために、これまで通りに頑張って行きたいと思います」とお話しされていました。生産者にも注目しているのが『ゴ・エ・ミヨ』の特徴の一つです。

「一本杉 川嶋」川嶋亨氏 (左)

〈明日のグランシェフ賞〉は2名の受賞でしたが、そのうちのお一人が、石川県七尾市で日本料理「一本杉 川嶋」を営む川嶋亨氏。受賞の連絡を受けた後に、能登半島地震が発生。店舗も大きな被害を受けて、営業ができない状況が続いています。「この受賞の場に来てもいいのかギリギリまで悩みました」とスピーチを始めた川嶋氏。「自分が明日を向いて一歩踏み出すことが、地域経済を復興させることになると思いこの壇上に立たせていただきました。諦めずに前を向いて、必ず春が来ると信じて、仲間と共に頑張っていきます」の言葉には会場からひときわ大きな拍手が沸き起こりました。

「旅」と「美味しい食事」は切っても切れません。旅に出かける時は『ゴ・エ・ミヨ2024』をしっかりチェックして、自分のお気に入りになる素敵な料理店を探したいですね。

ゴ・エ・ミヨ 2024

【定価】本体3,300円(税込)
【発行】株式会社ONODERA GROUP
【発売】株式会社 幻冬舎

Text /トラベルアクティビスト真里

世界中、好奇心を刺激する国々を駆け巡るトラベルアクティビスト。外資系金融機関に勤務の後、1年の3分の1は旅をする生活へ。ジョージア、バルト3国はじめ訪れた国は50カ国以上。日本中も巡り、行った先で出会った人、風景、食etc. 旅の醍醐味をレポートします。



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