日本人が選ぶ、世界に伝えたい日本のレストランリスト
「The Japan Times Destination Restaurants 2024」授賞式へ

「The Japan Times」といえば、日本を代表する英字新聞。創刊は1897年(明治30年)という長い歴史を持ち、日本の出来事を英語で、国内在住の外国人はもちろんのこと、世界に発信してきたメディアです。世界各国の政府高官やシンクタンクはもちろん、各国のメディアにも日本に関する信頼できる情報ソースとして活用されています。

そのジャパンタイムズが、「日本人が選ぶ、世界に伝えたい日本のレストランリスト」として「Destination Restaurants List」を2021年から発表しているのをご存知ですか?毎年10軒のお店を紹介し、そのうち1店を「Restaurant of the Year」に選出しています。The Japan Timesですから、発信はもちろん英語、そして日本語。過去に「Destination Restaurants」として選出された地方のレストランのシェフご夫妻から聞いたことがあるのですが、「海外からのお客様が急に増えたので、どうしてだろうと不思議に思っていたら、“Destination Restaurantsを見てきたという方々だった」とのこと。英語での情報発信がメインの媒体ですから、情報がグローバルに素早く届く証左ですね。

「The Japan Times Destination Restaurants」には、他のレストラン評価ガイドと大きく異なる点が二つあります。一つは、「東京23区と政令指定都市を除く場所にあるレストランが対象」ということ。地方にこそ日本の魅力があり、その名の通り「Destination」すなわち「目的地」となるレストランの情報を国内外に発信していこうということです。二つ目として、国内外の食の世界を知り尽くした3名の審査員がディスカッションして合議制で選定していくというもの。何人もの覆面調査員が訪問してさまざまな項目に点数をつけて行くという他のレストランガイドとは異なるユニークな方法です。

2024年「Destination Restaurants List」受賞のシェフが並ぶ。PHOTO:TAKAO OHTA

先日行われた2024年の受賞式は、東京タワーが目の前に見える、麻布台ヒルズの34階。スポンサーとなっている複数のラグジュアリーブランドのブースも並んでおり、華やかな会場です。過去に選出されたレストランのシェフたち、そして今年新たに選出されたシェフが一堂に会し、和気あいあいとした雰囲気。今年選出されたレストランは北海道から沖縄まで様々な地域から選ばれており、日本料理・イタリアン・イノベーティブとお料理の分野もさまざまです。選出されたレストランのシェフたちが順々に喜びを語る中、石川県七尾市《一本杉 川嶋》の川嶋シェフは、能登半島地震でお店が全壊となってしまい営業再開の見通しが立っていないとの厳しい状況をお話しになられました。スピーチ中に声を詰まらせる場面もあり、会場からは「頑張れ!」と応援の声がかかり、温かな拍手も湧き上がりました。

石川県七尾市《一本杉 川嶋》の川嶋 亨(シェフ
北海道中川郡豊頃町「Elezo Esprit」の佐々木章太郎シェフ

2024年の「Restaurant of the Year」は、北海道中川郡豊頃町「Elezo Esprit」が選出されました。住民の多くが、酪農や畑作、漁業に従事し、食料自給率がカロリーベースで1100%を超えるという、食材の豊かな土地だそう。オーナーシェフ佐々木章太氏は、食肉処理流通事業からスタートし、食肉総合ラボラトリーの建設など、北海道の地で独自の食肉文化を築いてこられました。2022年に開業したオーベルジュは1棟に2名宿泊できる宿泊棟が3つとレストラン棟から成ります。映像を見ると、北海道の広大な大地に立つレストランと眼前の海がとても美しく、ぜひ宿泊して、佐々木シェフの手によるお肉をいただいてみたいと思いました。

2021年から始まった「Destination Restaurants」に選出されたお店も4年間で40軒となり、2023年までの30軒と2024年の「Restaurant of the Year」をまとめた「The Japan Times Destination Restaurants: Authentic Japan Selection 2021-2024」がジャパンタイムズ出版から発刊されたとの発表もありました。シェフとお料理の写真とともにお店の紹介が日本語と英語の両方で書かれています。私が行ったことがあるお店もあれば、全く知らなかったお店もあり、ページをめくっていると「このお店、美味しそう」「このお店に行くにはどんな旅行プランを立てようかな」とワクワクしてきます。フーディーな外国の友人にプレゼントするのも良いですね。売り上げの一部は、令和6年能登半島地震への義援金になるとのこと。ぜひ協力したいです。

2024年「Destination Restaurants List」は以下の通りです。

https://authentic-japan-selection.japantimes.com/jp/

《Elezo Esprit》佐々木 章太(北海道中川郡豊頃町)

《一本杉 川嶋》川嶋 亨(石川県七尾市)

《JIMGU(ENOWA YUFUIN)》Tashi Gyamtso(大分県由布市)

《Mauvaise herbe》小島 圭史(沖縄県うるま市)

《松阪 私房菜 きた川 》北川 佳寛(三重県松阪市)

《割烹 新多久》山貝 真介 山貝 亮太(新潟県村上市)

《海老亭別館》村 健太郎 (富山県富山市)

《VENTINOVE》 竹内 悠介 (群馬県利根郡川場村)

《馳走 西健一》西 健一 (静岡県焼津市)

《カエンネ》臼井 憲幸 (長野県茅野市)

Text /トラベルアクティビスト真里

世界中、好奇心を刺激する国々を駆け巡るトラベルアクティビスト。外資系金融機関に勤務の後、1年の3分の1は旅をする生活へ。ジョージア、バルト3国はじめ訪れた国は50カ国以上。日本中も巡り、行った先で出会った人、風景、食etc. 旅の醍醐味をレポートします。

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