ドイツワインは甘口という印象を持たれているなら、それはもう古いかも。
そして、さらに進化して少し低めのアルコールで軽やかなワイン、夏にぴったりの爽やかな発泡ワインなど、とてもバラエティに富んでいます。そんなドイツワインとこれまたカリーがすぐ思い浮かぶインド料理の概念が覆る新感覚で洗練されたモダンインディアンキュイジーヌのペアリングイベントに参加しました。
ナビゲーションを務めたのは、パレスホテル東京グランドキッチンのチーフソムリエである瀧田昌孝氏。ブドウ・ワイン研究所があって世界的に有名なドイツのガイゼンハイム大学でワイン醸造学について学ぶ機会もあったそうです。
1970年代に聖母の乳「リーププラウミルヒ」と言われた「マドンナ」がとても流行って、ドイツワインと言えば、このフルーティな甘口という印象をいまだ持っている人も多いわけです。しかし、ドイツワインのトレンド、甘口から辛口へ。生産ワインの約50%は辛口なのだそう。そしてかなり広い範囲で、モーゼル、ラインガウ、ラインヘッセンなどの有名産地だけでなく全13もの産地があり、気候や土壌、生産地の地理的条件でさまざまなキャラクターのワインが造られています。
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この日の最初の一杯は、夏にぴったりのスパークリングから。発泡ワインは、生産する場所などによって、シャンパーニュ、クレモン、プロセッコなどといろいろな名前で呼ばれますが、ドイツのイツの発泡ワインの総称は「ゼクト」です。
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ドイツではカジュアルなドイッチャーゼクトからいちばん質の高いクレマンまでいろいろあって、イタリアのプロセッコの年間生産量が6億本に対し、ドイツのゼクトも4億本ととてもたくさん造られています。今日のゼクトはクレマン、とて爽やかな飲み口かつ余韻もあるエレガントな泡でした。
今回のドイツワインのペアリングを楽しんだレストランは、新感覚のスパイス使いと洗練度でこれがインド料理と驚かされるモダンインディアンキュイジーヌのレストラン「SPICE LAB TOKYO 」(銀座)。
スパークリングに合わせた小さな前菜はインドのソウルフードですが、陶器の白いクッション型のお皿にのって、こんなにお洒落!
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最初は、スープの入った真ん中のゴルガッパから。手前の左はサモサ(グリンピース)、上の左がドクラ(焼きナスとトマトチャツネを添えて)。右は、ゴマの葉っぱで巻いたマグロと野菜。手前右はカレーパンのイメージの竹炭入りチョーレイパン。一口サイズで楽しめます。
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次は、ジルヴァーナという品種で、リンゴやメロンのような果実味が爽やかな白。これはショルパというホワイトアスパラガスを使った季節のスープと。
ラインヘッセンの辛口の白、ソーヴィニャー・グリと緑豆を使った無発酵のドーサのベサラットウを合わせて。フルーティで花のような香りに優しいスパイス使いが合います。
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ドイツの有名品種リースリングは、熟成したものは独特の風味をよくペトロール(石油っぽい)と表現しますが、瀧田氏によると最近は「若いオイリーミネラル」というのだとか。
そんなラインガウのリースリングとトマトの味噌スープのペアリングを挟んで赤へ。
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ラムチョップとクミンポテトにシュペートブルグンダー。よく実ったサワーチェリーのような熟成感!そこにハーブも少し感じてとても合います。ドイツの品種が難しいと思われるかもですが、シュペート(遅摘みの)ブルグンダー(ブルゴーニュ)ということで、味わいも思い浮かびますね。
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最後は、枝豆とトウモロコシのビリヤニに同じくシュペートブルグンダーのロゼ。
ベジタリアンなビリヤニも新鮮だったのですが、ピノ・ノワールのロゼがフレッシュで軽やかさもあってぴったり。アルコール度数が11.0%と低いのもそう感じた理由だと思います。
インド料理と言うと重たいイメージもあるのですが、今回はスパイスはとても香り高いのにとてもヘルシーな感じのコースでした。ドライで軽やかだったり、果実感のある赤だったりドイツワインの様々なバリエーションに出会えたのも収穫でした。
Wines of Germany 日本オフィスが7月15日(火)から8月31日(土)までドイツワインキャンペーン「German Wine Weeks 2024 」を実施中。全国にある約80店舗の小売店や飲食店でドイツワインを気軽に楽しめる機会を作っているそうです。詳しくは下記のキャンペーンサイトを参照ください。
ドイツワインキャンペーン「German Wine Weeks 2024」
https://jp.winesofgermany.com/german-wine-week/2024/
Text /小野アムスデン道子
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世界有数のトラベルガイドブック「ロンリープラネット日本語版」の編集を経て、フリーランスへ。東京とポートランドを行き来しつつ、世界あちこちにも飛ぶ、旅の楽しみ方を中心に食・文化・アートなどについて執筆、編集、プロデュース多数。インバウンド・コンサルタント。日本旅行作家協会会員。