ユネスコの食文化創造都市に指定されているマカオは美食の街。中国伝統の広東料理はもちろんのこと、西洋と東洋が交わる地で独自に発展したマカオ料理、新感覚の創作料理まで、世界中のおいしいものを味わえます。マカオ旅レポートの最終回では、新店が続々とオープンしているなかで今、訪れたいホットなレストラン5軒を厳選してご紹介します。
【マカエンセの暮らしから生まれたマカオ料理】
16世紀の大航海時代、ヨーロッパと東洋の交易の拠点として発展したマカオ。“マカエンセ”とは、ポルトガル語で“マカオのポルトガル人”という意味。マカオにもともと暮らしていた中国人と、この地に定住するようになったポルトガル人との間に誕生した子孫のことをこう呼びます。彼らが生み出したマカオ料理は、世界有数のフュージョン料理の一つ。それを味わえるのが、「土生公館(Casa Maquista)」です。
レストランがあるのは、池の対岸にコタイのカジノリゾートを一望する緑地公園「タイパ・ハウス・ミュージアム(The Taipa House Museum)」内。公園内に並ぶ住宅群は1912年に建てられたもので、かつてポルトガル人の高官が暮らしていた邸宅。5軒ある中の1軒が今年7月から、ホームスタイルのマカオ料理を味わるレストランになりました。
マカオ料理の特長は、チキンを中心とした肉類、ナマズやエビなどの魚介に、香辛料をふんだんに使ったもの。大航海時代、希少品だった香辛料を使う料理が誕生したのは、この地ならでは。ヨーロッパ料理ともエスニックとも異なる、独自の味わいになっています。スパイシーな味付けが多いのですが、辛さはマイルド。料理ごとにスパイスの使い方が異なり、多彩に交わり合ったマカオの歴史がそのまま料理にも表れています。
食事の後は、マカエンセが暮らした時代の調度品がそのまま残る生活ミュージアムを見学するのがおすすめ。そのまま公園内の散策を楽しんだり、第1回でご紹介した官也街や、第4回のアクティビティ編でご紹介した「益隆爆竹工場跡」へ足を延ばすのもいいでしょう。どちらもここから歩いて10分程度の距離です。
●土生公館(Casa Maquista)
https://www.facebook.com/profile.php?id=61559817030731
【とびっきりおしゃれで身体にやさしい飲茶ランチ】
今回の旅で、最も感動したランチがここ。2023年秋に開業したホテル「Wマカオ スタジオ・シティ(W Macau Studio City)」内にあり、モダンスタイルの広東料理を味わえるレストラン「ディーバ(Diva)」です。
シェフのヤップさんは、クアラルンプールやドバイ、中国本土などの五つ星レストランで腕を奮ってきた経験の持ち主。ここでは伝統的な広東料理をベースに、マカオ料理のテイストを加えた料理を提供しています。さらに、季節の食材を使い、医食同源の要素を加えていることも特徴。可愛らしい形の点心、優しい味わいのスープ、ほどよくピリ辛風味に仕上げた麺料理など、最後まで目と舌を楽しませてくれました。
●ディーバ(Diva)
https://www.studiocity-macau.com/en/dining/diva
【ワクワクが止まらない、アフタヌーンティー】
アフタヌーンティーにおすすめなのが、マカオ最大級の統合型リゾート「ギャラクシー・マカオ(Galaxy Macau)」のモール内にあるティーレストラン「チャ・ベイ(CHA BEI)」。季節によって内容が変わるアフタヌーンティーのテーマは“Nostalgic Reimaging”。宝石箱のような2段重ねのトレイで運ばれてきます。
鏡付きの蓋を開け、二段目を引き出すと、美しく並べられてセイボリーとスイーツに思わず歓声が。一つひとつがとても手が込んでいて、食べるのがもったいなくなるほど。眺めているだけでワクワクしてきて、食べれば幸せな気持ちになるアフタヌーンティ・メニューです。
店名の「CHA BEI」とはティーカップという意味。スイーツ、ティーメニューのほか、スムージー、カクテル、サラダやランチコースなどのメニューも豊富。オールデーダイニングとしても利用できます。
●CHA BEI
https://www.galaxymacau.com/dining/restaurants/chabei/
【日本酒とのペアリングで味わう新感覚の料理】
日本酒とのペアリングを楽しめる、ちょっとユニークなレストランがフュージョン料理の「ルナ(酌月:LUNA)」。古民家風の店内は1階がバーカウンター、2階がダイニングルーム。料理は、和風フレンチといったところでしょうか。肉、旬の野菜や魚介をふんだんに使った贅沢な内容で、キムチ、紅ショウガ、ワサビなどもアクセントに。竹に刻まれたメニュー、ワイングラスでサーブされる日本酒など、多文化が交錯するマカオならではの食体験ができます。
●ルナ(酌月:LUNA)
https://www.instagram.com/lunamacau/
【マカオ版“予約が取れないレストラン”の筆頭はここ!】
今回のレポートの最後に、マカオ旅最終日のディナーにふさわしいお店をご紹介します。全室バトラー付きで知られるホテル「セントレジス マカオ(The St.Regis Macao)」内の「セントレジスバー」です。「セントレジス」といえば1904年にニューヨークで誕生したホテルで、そのバーは社交界の象徴となったことでも知られます。ここマカオでもその伝統を引き継ぎ、エレガントで格式を感じさせる空間になっています。
店名は“バー”ですが、午前10時から深夜2時までオープンし、アフタヌーンティーも提供するオールデーダイニング。とはいえ、最も雰囲気があるのは夜8~9時を回った遅めの時間。ジャズの生演奏とオリジナルカクテルを味わいながら、極上のマカオナイトを楽しめます。
夕方6時以降のドレスコードはスマート・カジュアル。ちょっとドレスアップして、旅の最後の夜に訪れてみてはいかがでしょうか。今マカオで“もっとも予約が取りにくい店”の1軒なので、早めの予約がおすすめですよ。
●セントレジスバー(The St. Regis Bar)
https://www.thestregisbarmacao.com/
ストリートフードから伝統的な郷土料理、ユニークなフージョン料理など、世界の食を楽しめるマカオ。最近では世界中のスターシェフが、アジア進出の拠点として注目しているのがマカオなのだとか。現在、16軒のミシュランレストランがあり(2024年3月現在)、その数は年々増加中。食の最先端を行く街で、美食三昧の旅を楽しんでみてください。
協力/マカオ政府観光局 https://www.macaotourism.gov.mo/ja/
Text /永田さち子
ライター・編集者。医学雑誌、スキー雑誌の編集を経てフリーランスに。旅行書、雑誌を中心に旅、グルメ、料理、健康コラムなどを執筆。ハワイに関する著書に、『ハワイのいいものほしいもの』『おひとりハワイの遊び方』『ハワイを歩いて楽しむ本』(実業之日本社)、『50歳からのHawaiiひとり時間』(産業編集センター)ほかがある。旅行情報サイト『Risvel(リスヴェル)』にコラムを連載中。http://www.risvel.com/column_list.php?cnid=6