身のまわりには、さまざまな愛が溢れています。恋人同士の燃え上がるような愛、親子や夫婦など家族への愛、生まれ育った故郷への愛、身近な動物への慈しみの愛。また、最近よく耳にする「推し活」も、一つの愛の形ですね。
この冬、東京・広尾の山種美術館では、LOVEをテーマに日本の近代・現代絵画を中心に取り上げた特別展「LOVE いとおしい…っ! -鏑木清方の恋もよう、奥村土牛のどうぶつ愛-」を開催しています。

自らの子供をモデルとして描いたこちらの作品は、丁寧な描写に愛情を感じますね。ニットの質感が印象的です。
今回の展覧会のポスターにも描かれている美人画の巨匠鏑木清方の作品は、近松門左衛門が浄瑠璃に描かれた悲恋の物語。後に歌舞伎にもなった物語を《薄雪》(福富太郎コレクション資料室)において、格調高く表しています。展示されている作品は、これから心中しようという場面を描いたものですが、女性のおくれ毛やなんともいえない表情に思わず目が引かれます。

動物を描いた作品も多く展示されています。北野 恒富の 《道行》は、カラスが不穏なもの悲しい雰囲気を表しています。
奥村土牛は、生きものを描くことを好み、今回の展示会オリジナルグッズにも可愛らしい兎の品物がありました。動物愛が表れた作品のなかの猫や犬、鴨雛など「いとおしい・・・っ」と思わずキュンとくる作品がたくさんありました。


小林 古径 《猫》は、真正面を見据えた猫に気高さが漂います。本作品のためのスケッチが複数残されていて、大正後期の滞欧時の写生には、エジプトのバステト神と思われる猫の図像も含まれています。
冬はクリスマスやお正月、バレンタインデーなどで、親しい人に接する機会もあることでしょう。一年で最も愛が身近となるこの季節に、画家たちが多彩に描いたLOVEの名品を大切な人と鑑賞するのも愛おしい時間になるのではないでしょうか。

館内にある「Cafe椿」では、特別展に合わせた青山・菊家の繊細なオリジナル和菓子をお抹茶と楽しむことができます。シナモン風味の練り切りの「福うさぎ」や、川合玉堂が描いた鵜飼の情景をイメージした「かがり火」など、見た目も美しい和菓子を美術館賞の余韻に浸りながら楽しんで下さい。

奥村土牛の人気作品である《兎》(山種美術館蔵)が描かれたお茶缶には、しょうが和紅茶が入っています。1年間、山種美術館の所蔵作品をお部屋で楽しめる2026年のオリジナルカレンダーも発売中です。
特別展「LOVE いとおしい…っ! -鏑木清方の恋もよう、奥村土牛のどうぶつ愛-」概要
会期 2025年12月6日(土)~2026年2月15日(日)
会場 山種美術館 (〒150-0012 東京都渋谷区広尾3-12-36)
開館時間 午前10時~午後5時 (入館は午後4時30分まで)
休館日 月曜日 [1/12(月・祝)は開館、1/13(火)は休館]、12/29(月)~1/2(金)は年末年始休館
入館料 一般1400円(1200円)、中学生以下無料(付添者の同伴が必要です) 冬の学割:大学生・高校生500円
公式HP https://www.yamatane-museum.jp
Text /酒・食・旅・文筆業 磯部らん

コミュニケーションやマナーに関するビジネス本を多数出版。とくに発展途上国が好きで、アマゾン川でピラニア釣り、南インドにドーサを食べになど、好きなことをしに海外をひとり旅する。日本酒利き酒師。http://isoberan.com