東京・六本木の国立新美術館では、「テート美術館 ― YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート」が、開催されています。本展は、ロンドンのテート美術館が同館のコレクションを中心に編んだ、1990年代イギリスの革新的な創作を多角的に紹介しており、約60名の作家による約100作品を通して、当時のクリエイティブな熱狂が世界のアートシーンに与えた影響を目の当たりにすることができます。
YBAは「ヤング・ブリティッシュ・アーティスト」の略称で、1980年代末から90年代にかけてロンドンを中心に活動し、脚光を浴びたイギリスの若手アーティスト群を指す言葉。ダミアン・ハースト(1965~)、トレイシー・エミン(1963~)、レイチェル・ホワイトリード(1963~)ら、現在も国際的に評価される作家を多く含み、彼ら・彼女らは大胆で、センセーショナルな手法によって、既存の美術の枠組みを超えるような活動を展開し、後世にも大きな影響を与えています。

後天的な回避不能 1991 テート美術館蔵
ガラスケースの中にオフィス空間を閉じ込めた作品。テーブルの上の煙草、灰皿、ライターは、死をもたらすもののメタファーであり、見る者に問いかける作品となっています。
90年代前半以降、「YBA」というラベルが当時のイギリス現代美術の象徴的な動向を指す言葉の一つとなり、同時にイギリス文化を世界にプロモートする“クール・ブリタニア”と呼ばれた文化的ムードと連動して、アートマーケットにおいてグローバルな認知を獲得する強力なブランド名になっていった歴史があります。同時代のイギリスポップカルチャーを象徴するアーティストがOASISだと言えば、あぁ良く聞いていた、その時代か!と思われる方は多いと思います。

左のジェレミー・デラーの《世界の歴史》(1977−2004、cat.38)は、英国文化がいかにサウンドを通して再創造され続けているかを明らかにしています。この作品は東京会場で販売されているオリジナルグッズとしても採用されています。
「クール・ブリタニア」は、イギリスで生活や文化の一部となり、この用語は「若さ」や「革新性」を強調する英国文化を象徴するブランドとなりました。YBA作家は80年代に学生期を過ごした世代です。労働者階級出身の創造的な人々が、貧困と対立の時代に反応し、芸術を通して日常に新たに焦点化し、生活の複雑さをギャラリーに持ち込み、これまでのアートで使用されなかった素材を用い、それを達成しました。

戦争や人種問題などを扱った作品も多くあり、まだ差別なども色濃く残る時代の作品や映像からは、ただ見るアート作品としてだけでなく、当時の時代背景や現代の問題にも通じる課題を突きつけられて考えさせられました。

発の瞬間を捉えたような作品、制作当時、爆破事件が英国全土で起こっていたという背景もあり、壁に映った影が美しくも悲しさを感じさせます。
90年代は現代アートが本格的にアートマーケットの主役となった時期で、YBAはこの現象にもっとも貢献した動向ですので、ぜひ、90年代のアート背景を感じに、足を運んでみてはいかがでしょうか。

ダグラス・ゴードンのテキストの作品の言葉は、私が一番気に入った作品。「君は君の愛を永遠に隠しておくことはできない」と言うメッセージのアイマスクはプレゼントにも素敵です。税込1800円。
オリジナルグッズがとても充実していて、個人的には今までで一番、たくさん買い込みたくなるグッズばかりでした。こちらも要チェックです!
開館情報
2026年2月11日(水)~2026年5月11日(月)
時間 10:00 ~ 18:00 金曜日・土曜日は20:00まで
休館日 火曜日(5月5日は開館)
入場料 一般 2300円、大学生 1500円、高校生 900円、中学生以下 無料
展覧会URL https://www.ybabeyond.jp/
会場 国立新美術館
Text /酒・食・旅・文筆業 磯部らん

コミュニケーションやマナーに関するビジネス本を多数出版。とくに発展途上国が好きで、アマゾン川でピラニア釣り、南インドにドーサを食べになど、好きなことをしに海外をひとり旅する。日本酒利き酒師。http://isoberan.com