京都の紅葉の名所といえば、通天橋からの絶景で有名な東山区の禅寺・東福寺を一番に思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
その東福寺の禅宗文化の貴重な品々を紹介する初の大規模展覧会が京都国立博物館で12月3日(日)まで開かれています。
先日、プレス向け内覧会に行って一番感じたことは「規格外のスケール感」と「圧倒的な色彩」でした。
東福寺は鎌倉初期、九条道家によってつくられました。まだ当時、新興だった禅宗を広め、奈良の東大寺や興福寺をしのぐ寺の建立を目指したため、名前を一字ずつとって「東福寺」とし、大きな建築物とそれに見合う大きな仏像や仏画などがつくられて、この圧倒的なスケール感が今に伝わっているのです。
展覧会は大きく5つの章に分かれており、中でもかつてはあの水墨画で有名な雪舟(せっしゅう)と並び称され、「画聖」と崇められた室町時代初期の絵仏師・吉山明兆(きっさんみんちょう)30代の大作『五百羅漢(らかん)図』は必見です。
羅漢とは釈迦の弟子で、仏教修行の最高段階に達したもののこと。1幅に10人ずつ、計50幅に500人の羅漢さんを水墨画と極彩色とで表現した絵は、そのカラフルさと精密さに圧倒されます。約600年前の当時はもっと水墨画の渋い色彩が主流と思いきや、明兆の絵を見ればその先入観を覆されることでしょう。
応仁の乱の戦火も乗り越え今に伝わる貴重な絵画は、近年14年にわたる修復作業が完了し、本展で初めて全幅公開されました。長らく消息不明だった第50号幅は、今年ロシアにあることが判明したという逸話もあり注目です(会場では復元模写を展示)。
4回に分けて展示替えをするため、50幅全部を見たい方は何度も通うか、または図録を購入することをおすすめします。
伝説の絵仏師・明兆のエリアでは、明兆の色彩豊かな作品にきっと驚かれることでしょう
これほどの色彩を明兆が描くには顔料や筆、墨などの貴重な画材、そして高度な技術も必要だったはず。京都国立博物館の森道彦研究員にうかがうと、「それが実現したのはここ東福寺が大陸との海外交流が盛んで当時の最先端が集まる、まるで一大文化センターのような場所だったからではないでしょうか。」とのことでした。
きっと当時の東福寺は京の都にあって、海外から最新情報に触れられる活気ある地だったことでしょう。今回の展覧会は絵仏師・明兆の再評価につながる展覧会にもなりそうです。
出口付近には、明治時代の火災で奇跡的に残った東福寺の旧ご本尊の2メートルを超える左手(仏手)などを撮影できるフォトスポットも用意されています。東福寺ならではの特大サイズ感をぜひ実感して下さい。
なお、この展覧会の期間中の11月11日(土)~12月3日(日)には、東福寺で令和の大修理完成を記念して、縦約12メートル、横約6メートルもある日本一巨大な『大涅槃(ねはん)図』の特別公開も予定されています。展覧会とあわせて、ぜひ紅葉の東福寺にもお運びください。
展覧会のグッズもとても充実しています。また、展覧会会場限定の東福寺の特別な御朱印もありますよ!その辺りは次回、詳しくお伝えしますのでお楽しみに!
特別展 東福寺
会期:2023年10月7日(土)~12月3日(日)(会期中、一部の作品は展示替えがあります)
会場:京都国立博物館 平成知新館
お問い合わせ:075(525)2473(テレホンサービス)
展覧会公式サイト:https://tofukuji2023.jp/
Text /倉松知さと
関西在住。キャスター、歴史番組制作、京都情報ポッドキャスト制作などを担当後、京都・歴史ライターへ転向。歴史ガイドブック『本当は怖い京都の話』(彩図社)ほか、雑誌で歴史エッセイを連載中。京都、歴史ジャンルでのラジオ、テレビ出演、講演なども。日本旅行作家協会会員。