小野アムスデン道子のポートランド日記:ノードストロームは、全米で100店舗以上を展開する高級百貨店。ホノルルにもあるのでご存知の方も多いのでは。ひと際輝くシルバーの上品な包装は、クリスマスに大活躍。もらったら誰もがうれしい。それにはちょっとわけがあるんです。
確かに、バイヤーの目利きの確かさ、接客の丁寧さ、品質とセンスで選ぶならここという感じのする百貨店なのですが、このお店のファンが多いのは、顧客第一のサービス。その中でもすごいのが、理由のいかんにかかわらずお客からの返品はすべて受け付けるというポリシー。レシートがなくてもです。
このノードストロームの返品受け付けポリシーにはある伝説があって、その昔「ここでタイヤを買ったんだが返品したい」と言って来たお客がいたそうな。百貨店でタイヤ?ありえません。もちろん、一度もタイヤは販売したことがないのに、店員は一言「かしこまりました」。即座に返品を受け付けたというもの。
実際に、私もギフトでいただいたもののザインがどうにも気に入らない服があった時に、ノードストロームのプライベートブランドだったので持っていったら、レシートもプライスタグもなかったのですが、商品のラベルなどから値段を調べ、返金をしてくれたことがあります。驚いてしまうのは、例えば着用後でも「洗濯で思ったより縮んだ」とか「暗い所で着てみたら思ったより映えない」とか、返品がどんな理由でも、とにかく「かしこまりました」。
このポリシーは「何らか品物に不満があって返品してくる顧客の対応は誰でも嫌なもの。従業員もその必要がなく、お客もハッピーで双方満足である」とその昔に役員が決めたそう。それが、従業員の対応の向上になり、今日のノードストロームの信頼に繋がっています。確かにここの品物は、安くはないけれどそれだけの付加価値があるもの。シルバーのラッピングは「ああこれはあの高級百貨店のものなのね」という印というわけです。
ちなみに、ノードストローム・ラックというアウトレットは、売れ残った商品と共にそうした返品の受け皿にもなっています(なので、ここの品物の返品ポリシーは期限制限などあって多少厳しい)。しかし、そのお陰でブランドものでも驚くべき値引率の掘り出し物が見つかることも。アメリカでは、ショッピングのおすすめスポットです。
text / 小野アムスデン道子