おいしい日本酒の蔵元を訪ねて。緑も美しい季節に、日本酒への愛がこもった善福寺ユウコさん紀行文です。
名水あるところに銘酒あり。でも名水の郷というと、東京からはとても遠いところにあるイメージですよね。ところが、東京から電車で1時間半のところにも素晴らしい水の郷があるのです。
その町の名は、神奈川県は小田原の少し手前にある開成町。最寄りは小田急線の開成駅ですが、今回は1駅手前の新松田でおり、お散歩しながら松田町~開成町をめぐりました。新松田に止まるロマンスカーもあるので、ここはゆっくり指定席でコーヒーでも飲みながら向かうのも手です。(JRの松田駅もほぼ同じところです)
新松田駅の北側は、ハーブ園やミカン狩りのできる農園などがある山になっています。景色を楽しみたくて、ちょうど綺麗に咲いていた山ふじなどを楽しみながら自然豊かな遊歩道をのぼってみると…絶景が目の前に! この日は大気が不安定で曇っていましたが、それでも町の中を流れる酒匂川、海まで見えました。
さて、今回のメインは、丹沢山からの豊富な名水を活かして素晴らしいお酒を作っている、蔵元さんの訪問です。まずは、JR松田駅からすぐのところにある、銘酒「松みどり」で有名な中沢酒造を目指します。
中沢酒造さんは、松田で文政8年(1825年)に創業、以来手造りにこだわって日本酒をつくっている蔵元です。
以前、小田原のお店で松みどりのひやおろしをいただき、その美味しさにびっくり! 口にふくんだ瞬間は酸を少し感じる上品できれいな飲み口なのですが、そのあとに訪れる芳醇な米の風味。ていねいな仕事ぶりがうかがえる、素晴らしいお酒でした。すっかりファンになり、いつか蔵元を訪ねたい…と思っていたのです。
まだ視界に醸造所の入る前から、のんべえ(私です)の鼻は「日本酒の香り」をとらえます。その香りを頼りに歩き進むと、入口に松みどりの樽が積まれた中沢酒造が、先ほど登った山を背負って目の前に現れました。うっとりと見とれていると、11代目の亮さんと美人の奥さまが優しい笑顔で迎えてくださいました。
「試飲なさいますか?」
はい、喜んで! ……とても穏やかでお優しいお二人を前に、私の中ののんべえが騒ぎ出します。この日の前日にリリースとなった「松田美人」をいただこうかなと思っていたのですが、残念無念、リリース翌日にもかかわらず、大好評でもう在庫がないとのこと! なんという人気でしょう! 定番の純米や、すっきりさわやかな飲み口の琴姫に続き、11代目の名前を冠した「亮」を試飲させていただきましたが、こちらも中沢酒造さんらしい綺麗ながらもしっかりと芯のある美味しいお酒でした。
東京では入手しづらい中沢酒造の美味しい日本酒、駅から近い蔵元さんはなかなかないので、松田にいらした際はぜひ!
さて、東京からちょっと足を延ばしての日本酒探訪の旅は続きます。
Text/善福寺ユウコ
出版社勤務。小学生の頃から筋金入りのロック好きで専門は英国インディーズ。資格をとらない単なるオタクと自分を称しながら、特に旅行、街歩き、ワイン&ビール、食関係、映画、英国ドラマ、ロンドンに愛を注ぐ毎日。