食や環境問題にそんなに関心のない人でも、「うなぎの稚魚が減っている」「マグロが減っている」というニュースは聞いたことがあると思います。マグロの減少に危機感を抱いた日本人が「近大マグロ」こと、完全養殖のマグロを生み出したことも。
身近な問題でありながら、どこか「今そこに迫る危機」としてとらえられていない食の問題、その中でも特に猶予がないといわれている水産資源について、海の恵みを食しながらその未来について考えるイベントが青山のUB1 TABLE で行われました。
日本の水産資源の減少に危機感を抱いた料理人たちのグループChefs for the Blue(「カンテサンス」岸田周三氏、「シンシア」石井真介氏 、「ザ・バーン」米澤文雄氏、「UB1 Table」森枝幹氏などの名だたるシェフたち)と五島の未利用魚の魅力発見に取り組むTカード「五島の魚プロジェクト」がタッグを組んだイベントで、実際に食事をしながらその素材の背景にあるストーリーを考えていく、という筋立てです。
今は普通にスーパーで手に入り、食卓に並ぶ魚介類ですが、それらは無尽蔵にあるわけではありません。乱獲や環境問題によって、確実に減ってきているのです。つい最近でも、有名な「目黒のさんま祭り」が、さんまを提供してくださっている東北で獲れておらず、祭りが始まって以来初めて昨年の冷凍物を使用した…というニュースがありました。勿論、さんまが獲れないのは様々な理由があるのですが、そもそも海産物は「限りある資源」であるということを認識しなければいけません。
イベントでは、サバ、クロマグロ、アサリ、うなぎ…とお馴染みの海産物がどれほどの危機状況にあるのかを聞きながらそれらのお料理をいただくのですが、単にお話を聞いているよりずっと心に刻み込まれます。何十年、いやもしかしたら十数年後にはこんなふうに食べられなくなるのかも…と思うと、今食べているその一口一口でさえ、尊いのだと実感するのです。
例えば、このままの状態を続けていけばどうなるのか──うなぎの未来を考えるパートがユニークだったので紹介しましょう。
まず、一見、「うな重」に見えるお重箱が運ばれてきます。あら、うな重がいだだけるのかしら?
いえいえ、絶滅危惧種のうなぎですから、当然のことのように蓋を開けるとそこには……はい、たれのかかった白飯だけが鎮座。まだその生態さえよくわかっていないうなぎ。このままだと本当に食べられなくなる日が来るのです。美味しい脂ののった「うなぎ」に心をはせながら、寂しくたれ味のご飯を食します。(これはいい演出でした!)
そして今後の対策の一つとして、獲れるけれど市場に出ることがないまま、地元で廃棄されることも多い「未利用魚」をもっと活用していこう、というお話に。今回お料理を担当してくださっているシェフのお店では、ブラックバスなど今まで食用として使用されてこなかった魚なども出しているそう。確かに、食べられるお魚なのでしたら、食べ方を工夫すれば美味しくいただけるはずですね。
考えると、今までは海で自由に生きている魚をいわば「勝手に」獲ってきて、食べてきていたわけです。それは都合がよすぎ、ですよね。次世代のためにも、自分たちのためにも、もっと未来を見据えた食資源計画を考えなくてはならない…と改めて認識させられた一日でした。
Chef for the Blue https://www.facebook.com/ChefsfortheBlue/
五島の魚プロジェクト https://tsite.jp/r/tcardsocial/goto/
Text/善福寺ユウコ
出版社勤務。小学生の頃から筋金入りのロック好きで専門は英国インディーズ。資格をとらない単なるオタクと自分を称しながら、特に旅行、街歩き、ワイン&ビール、食関係、映画、英国ドラマ、ロンドンに愛を注ぐ毎日。