何かと心がざわつくことばかりのこの秋、芸術で心に栄養を与えたい──。そんな方におすすめなのが、アーティゾン美術館で開催中の「琳派と印象派 東西都市文化が生んだ美術」展です。
アーティゾン美術館の前身は、「ブリヂストン美術館」。数年間の休館を経て、本年2020年「アーティゾン美術館」という新しい美術館として生まれ変わりました。「ARTIZON」(アーティゾン)は、「ART」(アート)と「HORIZON」(ホライゾン:地平)を組み合わせた造語で、時代を切り拓くアートの地平を多くの方に感じ取っていただきたい、という意志が込められているそうです。
さて「琳派と印象派 東西都市文化が生んだ美術」展ですが、琳派とは、17世紀の桃山時代から江戸時代へと移り変わる動乱の時代に、京都で俵屋宗達や本阿弥光悦が始め、その後18世紀に尾形光琳などにより発展した絵画を中心とする美術の一派です。大和絵の伝統を継承しながらも、大胆な構図や金泥・銀泥を用いた装飾性あふれる画風が特徴で、その後江戸で酒井抱一、鈴木其一などに受け継がれていきました。
江戸時代と言えば、それまでの戦乱の世が終わり、その後260年にわたって太平の世が続いた時代。それまで文化を担っていた公家や武家だけでなく、裕福な町人や農民による文化も花咲きます。琳派は、そんな時代に現れた新しい一派です。
一方の印象派は、19世紀後半にフランス・パリでルノワールやモネ、セザンヌ、ドガなどを中心に起こった芸術運動です。第一次大戦前のこの時代のフランスは、ドイツ(プロイセン)との間の普仏戦争も終わり、第三共和政が成立、万国博覧会が開催されエッフェル塔が建つなど都市の市民文化が花咲いた時代です。光と色彩に重きをおき、人々の日常や都市の風景を描いた印象派は、それまでの貴族たちを中心とした芸術界に革新と変容をもたらしました。
そんな「琳派」と「印象派」という東西の美術を「都市文化」というキーワードで読み解いていこうという今回の企画、双方を代表する作品が同時に見られる貴重な機会です。
特に琳派の作品はその質、数ともに圧巻です。なんといっても、教科書にも載っていて誰もが(写真などで)見たことのある、国宝《風神雷神図屛風》(俵屋宗達)が見られるのです! こちら、展示は後期(12月22日~2021年1月24日)になります。前期(11月14日~12月20日)には同じく俵屋宗達の「舞楽図屛風」(重文)が展示されています。また尾形光琳の《孔雀立葵図屛風》(通期展示)、俵屋宗達「舞楽図屛風」も見られます。
(前期、後期で展示が異なるので注意してくださいね)
印象派ではモネの《連蓮の池》、ベルト・モリゾ《バルコニーの女と子ども》、カミーユ・ピサロ《ポン=ヌフ》、またルノワール、セザンヌ、ドガなどこちらもおなじみの作家ばかり。
東西の名画が一同に集った、またとない機会。ぜひ足を運んでみては。
「琳派と印象派 東西都市文化が生んだ美術」
アーティゾン美術館 6階、5階 展示室:〒104-0031 東京都中央区京橋1-7-2
会期:2020年11月14日(土)~ 2021年1月24日(日)
前期/11月14日(土)~ 12月20日(日)
後期/12月22日(火)~1月24日(日)
*展示替えがあります。
開館時間:10:00 – 18:00 *入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(11月23日、1月11日は開館)、11月24日、年末年始(12月28日 – 1月4日)、1月12日
主催:公益財団法人石橋財団アーティゾン美術館、日本経済新聞社
入館料 (税込) 1,700円(ウェブ予約) 2,000円(当日窓口)
※当日チケットはウェブ予約チケットが完売していない場合のみ販売
大学生・専門学校生・高校生 無料 要予約
※入館時に学生証か生徒手帳をご提示ください
障がい者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名 無料 ※要予約
※入館時に障がい者手帳をご提示ください
中学生以下の方 無料 ※予約不要
★詳細はwebサイトを参照 https://www.artizon.museum/
2020年11月3日[火・祝] – 2021年1月24日[日]
石橋財団コレクション選 (4階 展示室)
特集コーナー展示|青木繁、坂本繁二郎、古賀春江とその時代 久留米をめぐる画家たち
Text/善福寺ユウコ
出版社勤務。小学生の頃から筋金入りのロック好きで専門は英国インディーズ。資格をとらない単なるオタクと自分を称しながら、特に旅行、街歩き、ワイン&ビール、食関係、映画、英国ドラマ、ロンドンに愛を注ぐ毎日。