【不老脳(4)】コロナウイルスで閉じこもる今こそ必要な有酸素運動 認知症を遠ざけるには? 

コロナウイルス感染拡大で、在宅勤務になったり、外出を控えたりと、みなさん、かなりの運動不足になっているのではないでしょうか? 一昨日、私が参加している日本認知症予防学会から、コロナウイルスの終息が長期化して、高齢者の方が閉じこもりがちになり、運動不足などで、正常な方がMCIへ、MCIの方が認知症へと進展していく懸念があるとの発信がありました。運動不足は、脳の機能の衰えを加速させます。

運動は脳の神経細胞の成長を促す

ハーバード大学の准教授のジョン J. レイティ氏は、著書である『脳を鍛えるには運動しかない』で、「運動と脳」の関係を科学的に説明しています。

その中で、「ネーパーヴィル・セントラル高校では、「0時限体育」を行っている。(中略)学期の最後に、リテラシ―授業を選択した生徒のリーディング力と理解力をテストしたところ、「0時限」の授業に出た生徒たちは17%もの伸びを見せた」と、運動は記憶力、集中力、学習態度によい影響があることが報告されています。運動は体を鍛えるだけでなく、脳も鍛えられることを示す事例です。ちなみに「0時限体育」は、バイクやトレッドミルなどの有酸素運動が中心でした。

なぜ運動は脳によいのでしょうか?

まず、有酸素運動をすることで、体の血の巡り=血流がよくなり、脳の血流も改善されて、脳に酸素が十分に行きわたります。脳が活動するためには、必ず酸素が必要になるので、十分な酸素によって、脳がしっかりと働くことができるというわけです。

つぎに、有酸素運動をすると、脳由来神経物質(BDNF)という物質が脳の中でさかんに分泌されます。このBDNFは、脳の神経細胞(ニューロン)や、脳に栄養を送る血管の形成を促し、学習や記憶など脳の認知機能の向上など重要な役割を担っているタンパク質の一種です。おもに記憶を司る海馬や大脳皮質に多く含まれています。

最近の研究では、重度のアルツハイマー型認知症の患者の方の脳では、BDNFの発現量が減少しているという報告もあります。

家で手軽にできる、おすすめ有酸素運動

ではどんな運動がよいのでしょうか? 体や脳にたくさんの酸素を運ぶ、有酸素運動がおすすめです。もっとも手軽なのは、ウォーキング。歩幅を大きく、少し速足で、話はできるけれど、歌は歌えないぐらいの中強度の負荷を意識してください。私たち世代だと、時速5キロぐらい、1キロを12分ぐらいで歩くイメージです。通勤やお買い物のときにトライしてください。

また在宅勤務中でもできる、手軽な家の中での有酸素運動を3つ紹介します。

1.「ハーフスクワット」 スクワットを完全に腰を下ろさずに、中腰の位置でしゃがむのを止めるやり方です。足腰への負荷は少ない分、長時間続けられるので有酸素運動に向いています。1回ずつゆっくりと、できるだけ長く続けるようにしてください。

2.「もも上げ運動」 足踏みの要領で、その場で太ももを高く上げます。太ももを高く上げると同時に腕を肩の高さまで上げてしっかり振るのがポイント。簡単にできますが、回数をこなすとかなり息が上がってきます。息が上がるといことは有酸素運動ができている証拠です。

3.「踏み台昇降」「踏み台昇降」は台に足を交互に乗せるだけでよい運動になり、ホームセンターなどで比較的リーズナブルな値段で売られています。

すべてテレビを見ながら、音楽を聞きながら、ながらでできますので、ぜひ気軽にはじめてみてください。

そして最後に重要ポイント。より効果的に脳の機能を鍛えるためには、有酸素運動をしてから、脳を使う仕事や学習をしてください。というのも、有酸素運動で脳の中に分泌されたBDNFが、脳をしっかり使うことで、さらに脳の脳の神経細胞(ニューロン)の形成を促すからです。ぜひ有酸素運動からの、仕事や学習、脳トレをおすすめします。

次回は、「【不老脳 (5) 】ルーチンや単調が招く脳の萎縮を防ぐには?です」。コロナウイルス感染拡大で外出が減ると単調な時間が増えてしまいがち。それを打破するための方法をお伝えします。

Text / 糸藤友子

リクルート→ベネッセ→ミズノを経て、50歳で脳科学ベンチャーへ。母の死をキッカケに健康寿命の延伸をミッションと決める。「人生は1回きりの旅である」から、いろいろな人と出会い、様々な体験をして、豊かに生きたいと願う。ベンチャーでは、脳を計りながら鍛える“最新”脳トレサービスを立ち上げ中。
【Active Brain CLUB】https://www.active-brain-club.com/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です