【不老脳 (11) 】 飲酒が脳の萎縮や認知症リスクを高める!?

前回の「不老脳」の連載で、認知症リスクを高める12の危険因子についてお伝えしました。その中に、「過度のアルコール消費」があります。昨今のコロナ禍で、飲酒量が増えている人が多いという話を聞きます。かくいう私もそうかもしれません。今回は、飲酒と脳についてのお話です。

私の場合、今は在宅勤務が基本になっています。朝7時すぎにはパソコンに向かって仕事を開始し、夕方18時すぎに終了。そこから、まずはプシュッと缶ビールか缶ハイボールを開けて、夕食の準備を始めます。コロナ禍前より、2時間以上前倒し、つまり飲む時間も長くなっているのです。

またコロナ禍の外出自粛で、自宅で家族とずっと一緒に過ごしたり、一日中誰とも会話せずに孤独を感じたり、日常生活でのストレスが増え、その対処行動として、いつもより酒量が多くなっているという調査結果もあります。

アルコールの飲み過ぎは、認知症リスクが3倍に

フランスの研究グループが、2018年に医学誌『The Lancet Public Health』で、アルコールの飲み過ぎは、あらゆるタイプの認知症、特に早期発症型認知症の発症のもっとも重要な危険因子であることを発表しました。

この研究は2013年~2018年のフランスの約3,000万人の医療記録を解析したもので、調査期間中に約110万人が認知症であると診断されました。その中でアルコール使用障害(アルコール依存症)がある人は、認知症のリスクが男性で3.36倍、女性で3.34倍も高まることが報告されたのです。

また、全体の5.2%にあたる約6万人が65歳未満に発症する早期発症型認知症と診断されました。早期発症型認知症と診断された患者の半分以上が、アルコールの飲み過ぎと関連していることも判明しました。

そして東北大学がアルコール摂取と脳の萎縮の因果関係をMRIなどで調査した研究によると、アルコールの摂取量が多い人ほど脳の様々な部位に萎縮が見られ、なかでも思考や記憶を司る前頭前野が萎縮することもわかっています。

健康のリスクを高める量の飲酒って?

厚生労働省によると、健康のリスクを高める純アルコール量は、1日あたり男性が60g以上、女性が40g以上です。適切な飲酒量の目安は、1日あたり男性が20g、女性が5〜10gほどとされています。

女性に危険!?な、純アルコール量40gと言われても、実際どれくらいの量かピンときません。純アルコール量を計算すると(※)、40gとは、ビール(5%)約1000ml、ワイン(12%)約420ml、ウイスキー・ブランデー(40%)約130ml、焼酎(35%)140mlほどです。ビールならロング缶2本、ワインなら1/2本強です。え、普通に飲んじゃうことありますよね。

脳の萎縮や認知症予防などのために、まずはご自身が飲んでいる1日当たりの純アルコール量を把握することをおすすめします。

逆に適切な飲酒量であれば、脳の活動を活性化するとも言われています。軽く飲むとアイディアがわいたり、頭の回転が速くなったりする人もいるのではないでしょうか? また赤ワインなどはポリフェノールを多く含み、認知症リスクを下げるという研究も発表されています。要は適量が大切ということです。

オーラルケアと認知機能への影響

飲酒だけでなく、オーラルケアも40代、50代からの注意が必要です。先日、「食から認知機能を考える会」と一般社団法人「日本認知症予防学会」共催のセミナーで、オーラルケアと認知機能への影響についての発表がありました。

歯周病になると、食事がうまくとれなくなり栄養バランスの崩れや免疫力の低下を起こし、また口臭などによる意欲の低下も起こります。このようなさまざまな方向から、歯周病は認知症リスクを高めることがわかっています。

また歯がほとんどなく義歯も使っていない人は、義歯を使用している人、歯がある人と比べて、認知症発症リスクが約1.9倍ということも研究からわかっています。

歯のメンテナンスやオーラルケアを今からしっかり続け、20年後、30年後の認知症を遠ざけていきましょう。

※純アルコール量の計算式:お酒の量(ml)×アルコール度数/100×0.8(アルコール比重)=純アルコール量(g)。

Text / 糸藤友子

リクルート→ベネッセ→ミズノを経て、50歳で脳科学ベンチャーへ。母の死をキッカケに健康寿命の延伸をミッションと決める。「人生は1回きりの旅である」から、いろいろな人と出会い、様々な体験をして、豊かに生きたいと願う。ベンチャーでは、脳を計りながら鍛える“最新”脳トレサービスを立ち上げ中。【Active Brain CLUB】https://www.active-brain-club.com/ 【ストレスマネージャー】https://www.neu-active-brain.com/stress-manager/

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