いま注目のワインをテイスティング!イタリア最北端で最先端? アルト・アディジェのワイン

イタリアの最北端、オーストリア、スイスと国境を接している特別自治州のトレンティーノ・アルト・アディジェ州アルト・アディジェをご存知ですか?(州の北がアルト・アディジェ、南がトレンティーノです) 南チロルと呼ばれ、第1次大戦前までオーストリア=ハンガリー帝国の領土でした。その歴史的背景から、公用語はイタリア語とドイツ語で、レストランのメニューから道路標識まで、2つの言語で表記されています。またそのほとんどが山岳地帯で、森林が土地の70%を占め、アルジェ川沿いに広がるワイン畑からは有名な世界遺産ドロミーティ(ドロミテ)山塊が連なっているのが見えます。そんなアルト・アディジェのワインが、今ワインラバーの間で大注目なのです。top画像:© IDM Südtirol Wein PHOTO:Tiberio Sorvillo

©  IDM/Südtirol Wein


アルト・アディジェのワイン作りの歴史は古く、ワイン作りが始まったのは、紀元前500年頃と言われています。そして現在のワイン生産の礎を築いたのが、「アルプス王」ことヨハン大公。彼は1850年頃にブルゴーニュやボルドーの品種のほか、その後この地方を代表する品種となるリースリングなどの国際品種をこの地方に持ち込み栽培を推奨、1893年には初の協同組合も設立されます。

どちらかというとカジュアルなワイン生産地だったアルト・アディジェが高品質のワイン生産へ舵を切ったのは、1970年代から。1980年代に入ると栽培品種の変更とともに品質への追求が高まり、2007年にアルト・アディジェ生産化委員会が設立。現在では協同組合員による品質の高いワインが造られています。普通「協同組合」と聞くと、カジュアルなワインを思い浮かべますが、妥協することなく品質を追求し、とても評価の高いワインを造り出すことに成功しています。

気候は州の南北で異なり、トレンティーノ地方は温暖な地中海性気候、アルト・アディジェ地方はアルプス性気候になりますが、渓谷を通り抜けるフォーンと呼ばれる温暖な南風によって気温は温暖で、ブドウ栽培を可能にしています。

代表的なブドウだけでも、土着品種のスキアバーヴァ、ラグレインから、国際品種のカベルネ、ピノ・ネロ、ピノ・グリージョ、シャルドネやリースリングなどまで、実に多種多様な品種が作られています。元々「オーストリアの最南端」だったときには、赤ワインが多く造られていましたが、現在は白ワインが64%、赤ワインが36%だそう。特に白ワインはその品質のよさで近年とても人気があります。

──と、前置きがとっても長くなりましたが、そんなアルト・アディジェのワインのテイスティングに参加してきました!

主催はアルト・アディジェ・ワイン委員会、ワインの説明をしてくださったのは、資生堂パーラー ザ・ハラジュクの本多康志さん。今回、本多さんがワインに合わせてお料理も提案してくださっています。


 中でも印象に残ったワインを少しご紹介しますと、白ワインではまずフィッチェルのソーヴィニオンブラン・リゼルヴァ・マティアス2018。ちょっとトロピカルな果実味が印象的で、酸もきれい。そしてトラミンのヌスパウマー・ゲヴェルツトラミネール2019は、リッチな味わいで、合わせた海老フライのタルタルソースの海老とマヨネーズの甘みにとゲヴェルツトラミネールの甘みが饗宴、口の中が幸せに。 

赤ワインでは、ギルランのシュライアー・アルテ・リーベン・ヴェルナッチ・アルト・アディジェDOC2018。土着品種のスキアーヴァ(ヴェルナッチ)を使用、凝縮感がありちょっぴりスモーキー。思っていたよりずっとリッチな味わいで、やはりスペック(スモークした豚モモ肉)などご当地の食材と相性がよさそうです。そしてカステルフェレルのピノ・ネロ・ブルグム・ノヴム・リゼルヴァ2016。こちらはボリューム感があり、ご提案いただいたマグロの漬け寿司+金山寺みそ、ライムの香りが、魚の臭みを全く感じさせず合っていました。醤油、かつおぶし系とも相性がよさそうです。


今回いただいたワインの価格帯は3000~12000円台でしたが、2000円台のものもあるので、おうちで飲むのにもぴったり。お隣のヴェネトのように生産量が多くないだけに、今まであまりお目にかかってこなかったアルト・アディジェのワインですが、その多彩さ、そして品質のよさはとても魅力的。イタリアでありながら南の陽気なワインと違って、質実剛健でとてもまじめな印象がするのはやはりその立地、歴史があるからでしょうか。これから大注目なのは間違いなし、です。

ご興味のある方、是非こちらのサイトでチェックしてみてください。

アルト・アディジェ ワイン公式サイト

https://www.altoadigewines.com/ja/

Text/善福寺ユウコ

出版社勤務。小学生の頃から筋金入りのロック好きで専門は英国インディーズ。資格をとらない単なるオタクと自分を称しながら、特に旅行、街歩き、ワイン&ビール、食関係、映画、英国ドラマ、ロンドンに愛を注ぐ毎日。

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