やまなし美酒美食! 八ヶ岳の麓、北杜エリアの大いなる自然を味わう

シェフやソムリエなどで構成された「やまなし美食コンソーシアム」

山梨県・北杜は、山々に囲まれた八ヶ岳の麓で風光明媚な地。山梨県では、県内で活躍するシェフやソムリエなどで構成された「やまなし美食コンソーシアム」を立ち上げて、新しいメニューの開発や、食文化の形成、やまなしの歴史や観光の魅力と連動した取り組みを行っています。

そのメンバーの一人が、山梨県北杜市にある、仏料理と日本料理の技術を取り入れたレストラン「Terroir 愛と胃袋」の鈴木信作シェフ。東京・三軒茶屋で自身のお店を4年間営業後、2017年に移転開業。現在では、農と山の達人たちから山菜採り、釣りなどを覚え、狩猟免許も取得しているそう。共に開業した奥様の石田恵海さんが店のマダムを務めて客人を出迎えます。

鈴木信作シェフを中心に北杜エリアの仏・伊・和・中のシェフとソムリエが集まり、レストラン「Terroir 愛と胃袋」にて、やまなしの県産食材と県産酒のスペシャルペアリングを体験する会が11月に催されました。

歴史を感じる空間の店は、かつて宿場町だった集落の一角の大きな古民家を改装してレストランにしています。

山梨県が全国初! ワイン・日本酒ダブルで「GI」

国の指定で正しい産地と確かな品質の証しである「GI」。山梨県からは、ワイン・日本酒の2つの酒類でGIが誕生し、全国初の快挙となりました。GIとは「酒類の地理的表示制度」で「Geographical Indication」の略。GI 山梨は、山梨が産地で原材料・製法・品質について一定の基準を満たしている証です。

この日のコースには、GIを取得した県産酒や、それに合う地域の優れた食材を使った料理人の美食が登場。山梨のお酒や土地の恵みを活かした美味しい料理とのペアリングは、県内各地の料理店でも味わうことができます。

「やまなしの美食」を発信

鈴木シェフは「移住して7年になります。県の皆さんと、友人のシェフやソムリエとタッグを組んで発信できることが本当に嬉しく、心より感謝しています」とコメント。

シェフとソムリエの5人が、北杜市の食材を中心に活かしたコースを仕立て、北杜市のお酒でペアリングを構成。食とお酒を通して、この土地の食文化を支える自然の豊かさが実感できました。

左からソムリエ:鈴木忍(booshino)、シェフ:羽田野博司(Chinese restaurant HUKU笑i)鈴木信作(Terroir 愛と胃袋) 櫻井秀義(秀よし)  森本慎治(Prosciutteria Morimoto)敬称略

コースの最初は、アミューズから。明野大根の唐揚げ(秀よし)、汲み出し豆腐 発酵大豆ソース(HUKU笑i) 、生ハムスプレッドのクロスティーニ(Morimoto) 、香茸クロケット(Terroir愛と胃袋)と、それぞれのシェフの魅力が一皿に詰まったオールスターズによって作られた逸品です。

アミューズ + 八ヶ岳タッチダウン HOKUTO Japanese pilsner

熱々の揚げたてで提供された石の上の串は、櫻井秀義シェフが小淵沢で作られている紫色の紅しぐれ大根を特別な出汁で炊いて唐揚げに。手前のスプーンは、羽田野博司シェフの豆腐料理で、大豆に豆板醤の辛味や風味など10日ほど漬けたものを細かくしてソースにしています。四角いクロスティーニは、森本慎治シェフによる自家製生ハムとオリーブとドライトマトのオイル浸けを合わせたもの。ガラスの上には、鈴木信作シェフによる、天然のきのこ「香茸(こうたけ)」とライスを詰めたクロケット。上に、竹炭のチップスとパルメジャンチーズを乗せてあります。

ペアリングのお酒を選んだのは、県産酒を知り尽くすソムリエの鈴木忍さん。山梨県に生まれ、都内のミシュラン星付きレストランでも修行を積んでソムリエに。北杜市へ戻り、地域との交流を深め、2022年11月に自身のワインバー「booshino」を開業しました。

山梨県は、日本ワイン発祥の地として、生産者やワイナリーも有名ですが、美味しいのは実はワインだけではありません。さまざまな種類の美酒があり、地域の食材を使った料理とのペアリングが楽しめます。そして、北杜市は土地や天候、水に恵まれて、ビール、ワイン、日本酒、焼酎、ウィスキーと上質なお酒が揃っています。

最初のお酒は、ビールの「八ヶ岳ビール タッチダウン」。使用されている北杜市原産の「カイコガネ」は、日本初の国内産ホップ品種だそう。モルトが豊かで雑味のないクリアな味わいは、シェフたちが作る発想豊かでバリエーションに富んだアミューズにぴったりでした。


前菜(冷菜) 八ヶ岳生ハム3種盛り <12カ月熟成、24カ月熟成、野生猪肉70カ月熟成>(Morimoto) + city farm シャルドネ 2022  

前菜1皿目は、生ハム。森本慎治シェフは、2002年に八ヶ岳に移り住んでイタリア料理店を開店。2009年より完全無添加の生ハムづくりに取り掛かって、現在は北杜市大泉町で「Prosciutteria Morimoto」を開き、生ハム職人とイタリアンのシェフを両立しています。森本シェフが作る自家製無添加生ハム「八ヶ岳生ハム」は、山梨県産ブランド豚を天然塩と八ヶ岳の風のみで仕込んでいます。

一番左が、1年間熟成の12ヶ月のクリスタルポークの生ハム。隣の赤みの強いものが猪で、特別に提供された丸5年以上60ヶ月かけて熟成されたもの。右が12ヶ月と同じ豚の生ハムの24ヶ月。スライスしたてのフレッシュさで提供され、熟成感の違いでも味わいが微妙に違う食の妙が感じられます。信頼できる地元の猟師と連携して、その後に八ヶ岳からの冷涼で乾燥した風で熟成させ(八ヶ岳おろし)、自然の恵によって生ハムが出来上がります。

生ハムと相性がいい北杜市産のお米と山梨県産の桃で作ったビネガーによる酢飯、カレー風味にした北杜市・津金(つがね)という地域のりんごの温かいスープ、地元の岩原果樹園から西洋梨ラ・フランスを用意。猪の生ハムと酢飯が合うのは、森本シェフならではの工夫による、驚きの体験でした。

生ハムに合わせたのは、山梨県の会社city farmが白州で葡萄栽培をしたシャルドネ。フランス産のシャブリにも似た、シャープですっきりとした爽やかな味わいが生ハムに合います。

前菜(温菜)  八ヶ岳湧水鱒の真薯 白肌ごぼう煎餅添え(秀よし) + 武の井 純米吟醸 ひとごこち

「秀よし」の櫻井秀義シェフは、東京白金や南麻布の和食料亭で修業し、「リゾナーレ小淵沢」 の和食料理長を経て、この土地に魅せられて2008年に北杜市小淵沢町で独立開業しました。今回は、八ヶ岳の清流で獲れた鱒(ます)を真薯(しんじょ)のケーキにして、柔らかく調理したごぼうの筒と唐揚げに、かつら剥きのごぼうを上に飾りました。北杜市産の白肌ごぼうは、白くて柔らかく、香り高い特長を持っています。

ペアリングの日本酒は、武の井酒蔵の名を冠した「武の井」。酒米は、北杜市産です。杜氏(とうじ)は鈴木ソムリエの同級生だそう。美味しさがしっかりあり、後味はなめらかで爽やかな味わい。ほんのりメロンの香りと最後に若干のビターな感じが和食と合います。「武の井」ブランドは「青煌(せいこう)」というお酒でも知られています。

スープ  甲州地どりの蒸しスープ(HUKU笑i) + シャトー・シャルマン セミヨン釜無2000

「Chinese restaurant HUKU笑i」羽田野博司シェフは、中国料理の名店の修業を経て、2019年に独立開業。素材にこだわり化学調味料を使わず食材の旨味を味わえる中国料理を、北杜市大泉町で提供しています。店の名前は、訪れた人が笑顔になれるように名づけたそう。「甲州地どりの蒸しスープ」は、中国料理のシャンタン(スープ)を応用した地鶏の蒸しスープ。北杜市の干し椎茸を使用しています。通常は金華ハムなどを入れて煮詰めるものに加え、今回は「Prosciutteria Morimoto」のハムの骨からも出汁を取って、北杜市白州町の酒蔵の仕込み水を使ったスープはクリアで力強い味がします。

ペアリングは、北杜市白州町を流れる釜無川の近くで栽培している欧州系の葡萄品種セミヨンを使ったワイン。今回はシャトー・シャルマン セミヨン釜無をセラーで熟成させたヴィンテージを合わせ、甘味と酸味のバランス良い古酒の風味が地鶏の旨味を引き立たせました。

魚料理  陸作信玄えび ブイヤベースソース(Terroir愛と胃袋) + GRACE WINE ロゼ 2021

魚料理は、鈴木シェフによる海老のブイヤベース風。海のない山梨で温泉水をかけて養殖される海老の旨味と合わせるのは、GRACE WINEのロゼ。辛口でしっかりとしたボディの味わいは、海老の美味しさにも負けず、見事な料理とワインのマリアージュです。

飯  八幡芋の台湾式おこわ(HUKU笑i) + 武の井 長期樫樽熟成 純米焼酎 八ヶ岳の舞

蒸し器の蓋を開けた時に、楽しく華やかなおこわに歓声が上がりました。北杜市のもち米は新米で、水分を含みもちもちとし、山梨県の里芋と共に食感が楽しめます。

ペアリングは、ウィスキーのような味わいの7年熟成した純米焼酎「八ヶ岳の舞」。県産の米で醸した、樫樽熟成です。冷たすぎると料理に合わない、熱すぎるとお酒の香りが出過ぎる、というソムリエの配慮で人肌くらいの温度のお酒の仕込み水で割って料理に合わせています。米焼酎の優しくふくよかな味わいが、おこわに合います。

肉料理  ジビエ<鹿、猪、野鳥>のトゥルト 赤ワインソース(Terroir愛と胃袋) + アケノ・ヴェニュス カベルネ・ソーヴィニヨン 2020

山梨県では、ジビエが盛んです。真ん中が鴨肉、周りを鹿と猪が囲むように、ちりめんキャベツで巻いてパイ包みにしています。セロリとビーツのピューレ、フォンドボーベースの赤ワインソースを絡め、フランボワーズビネガーが酸味としてほのかなアクセントになっています。

メインの肉料理に合わせるのは、日照時間が日本一と言われる北杜市明野町で親子二代がワインづくりをする「アケノ・ヴェニュス」の赤ワイン。カベルネ・ソーヴィニヨンは色がしっかり出て果実味もスパイシーさもあり、なめらかな味わい。ベリー系の味わいがジビエの料理とマッチします。鈴木ソムリエによれば、醸造する方の物腰柔らかな優しい人柄が味にも表れているそう。アロマも味わいも広がるタイプのブルゴーニュグラスで、より特色の良さを感じることができました。

デザート  柚子プリン 柚子ピール甘露煮(秀よし) + 七賢 山ノ霞

水菓子のデザートは、プリン。北杜市白州町の老舗酒蔵「七賢(しちけん)」の近くで作られている柚子を使用してプリンにしています。生地には柚子の皮をすり込み、上のジュレは柚子の果汁。キャラメルソースにも柚子の果汁を絞って爽やかなカラメルソースに仕上げ、料理の最後は、すっきりとした爽やかなデザートに。アクセントは甘い柚子の皮の甘露煮です。

GIを取得した「七賢」は、白州の美味しい水を使った、お米のスパークリングワインで知られています。「山ノ霞」もシリーズの一つで、「ひとごこち」と「ゆめごこち」という米を使っています。シャンパーニュと同じ瓶内二次発酵で作られ、「澱(おり)」の沈殿の具合によっては、ボトルの最後の方は乳酸味が感じられます。甘すぎない甘味が、柚子プリンと絶妙に合います。

合わせて、どんぐりフィナンシェなどのミニャルディーズや、和紅茶がふるまわれました。

作家による店の器の数々も料理を引きたて、土地にインスピレーションを受けたシェフやソムリエ、ア―ティストが高い技術で共演するコラボレーションでした。

名シェフたちをも移住させるくらいに魅了する、山梨県・北杜エリアの、自然の恩恵と食材。「Terroir 愛と胃袋」の店名には、「愛は胃袋をとおってやってくる」という意味が込められているそう。北杜をはじめとする「美食王国やまなし」で大切な人たちや親しい仲間と新しい発見をし、食べながら、飲みながら、素敵なひとときを過ごしてはいかがでしょう。

鈴木信作シェフ Terroir愛と胃袋

山梨県北杜市高根町長澤414

https://aitoibukuro.com/

*古民家一棟貸しの宿「旅と裸足」も併設

櫻井秀義シェフ 秀よし 

山梨県北杜市小淵沢町上笹尾3332-171

https://kobuchizawa.net/hideyoshi/

羽田野博司シェフ Chinese restaurant HUKU笑i

山梨県北杜市大泉町西井出8240-3559

https://www.instagram.com/hukuwarai_chineserestaurant/

森本慎治シェフ Prosciutteria Morimoto

山梨県北杜市大泉町西井出8240-3178

https://morimoto-mt8.com

鈴木忍ソムリエ booshino

https://www.instagram.com/booshino_vins_et_plus/

「ワイン県やまなし」の美酒・美食 

https://www.pref.yamanashi.jp/kankou-sk/bishoku/top_page_since_2022.html

Text/鈴木陽子

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@yOU

 

エンタテインメント・ザファースト代表。STARRingMAGAZINE編集長。CS放送舞台専門局、YSL BEAUTYのAD/PR/SPマーケティング、文化系雑誌マネージングエディターを経験。25ヶ国70都市以上を取材、舞台・音楽のジャンル、宝塚歌劇トップスター、海外アーティスト含む100人以上にインタビュー。ペンネームのマドモアゼル安原で、各メディアに編集執筆。
エンタテインメントするWebメディア  STARRingMAGAZINE  www.starringmagazine.com

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