将棋界の全タイトルを手中にした藤井八冠。八冠になって初めて迎えた京都仁和寺の竜王戦第二局。さて、八冠初の1日目のおやつは･･･？
京都市右京区の総本山仁和寺（にんなじ）で、竜王戦第2局が行われています。先日八冠を達成したばかりの藤井竜王に挑戦するのは、同い年の伊藤匠七段。将棋界の若い二人の対決に注目が集まっています。
さて、「指す将」ではなく「見る将」の私が注目するのはなんといっても対局中のホッと一息タイムである「おやつ」です。
八冠になって初めて藤井八冠が選ぶおやつは･･･top 写真、京都の秋をギュッと詰め込んだ西陣の老舗・千本玉壽軒（たまじゅけん）さんの京菓子でした！
御菓銘は「京の秋の富喜寄（ふきよせ）」だそうです。
「ふきよせ」とは「吹き寄せ」ともいい、秋になり色付いた紅葉が風に吹かれてひとところに集まった様子を表した雅な言葉です。
京都では、縁起を担いで美しい漢字を当てて「富喜寄」と表現するお店も多いですね。
さて、千本玉壽軒さんの今回の京菓子。
まずハッと目に飛び込んでくるのは、華やかな京の紅葉を思い起こさせる黄色から橙、赤へと変化を表したような「きんとん」ではないでしょうか。
京菓子店のご主人たちは、朝晩の風、空気の変化を敏感に感じ取り、そこから季節を少しだけ先取りして和菓子に表されます。
今年は少し秋の訪れが遅い京都ですが、キンモクセイも香り、ようやく秋らしい日が続いています。そして待ち焦がれるのが紅葉の季節。左上は、その想いものせた和菓子なのではないでしょうか。こちらは御菓銘を「錦秋」というそうです。
中は秋のお楽しみ、「栗あん」だそうですよ！！美味しそう！
そして、お干菓子は紅葉と銀杏は「州浜（すはま）」で、松笠とぎんなんは「カタクリ」だそうです。添えられた松葉は「生砂糖」製。
そして昔から地元西陣で親しまれてきたお店の代表銘菓「西陣風味」ももちろん入っています。こちらは以前の仁和寺での対局でも藤井八冠は召し上がっているはずですね。羽二重の皮に黒胡麻入りのこしあんを巻き込んだもので、着物の反物を連想させる形が西陣らしい逸品です。
上京区千本今出川にある京菓子の老舗「千本玉壽軒」さんは、和菓子を販売するお店のお隣に「茶寮SENTAMA（せんたま）」も構えていらっしゃいます。なんとそちらにはカウンターがあり、職人さんが目の前で「きんとん」など季節の生菓子を作ってくださり、できたての和菓子を味わうことが出来ますよ。
今回、藤井八冠が召し上がった「京の秋の富貴寄」に入っていた和菓子も近いうちに店頭販売や茶寮SENTAMAのメニューにも入るかも知れません。
もちろん「西陣風味」など普段からあるお菓子もありますので、竜王戦の後、ぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
近くには学問の神様 菅原道真をまつる北野天満宮や応仁の乱の戦火にも奇跡的に免れた洛中で現存最古の建物がある千本釈迦堂（大報恩寺）もありますよ。
千本玉壽軒さんの和菓子は、茶道裏千家のほか、仁和寺や金閣寺、大覚寺などそうそうたるお寺に納められています。寺内の売店などでもそこでしか求められない京菓子もあるので、京都観光の際にはぜひチェックしてみてくださいね。
今後、茶寮SENTAMAに今回の竜王戦 藤井八冠にちなんだメニューが登場した際にはまたこちらでお伝えしたいと思っております。お楽しみに！
【千本玉壽軒（せんぼんたまじゅけん）】
住所：京都市上京区千本通今出川上ル上善寺町96
電話： 075－461－0798（菓子教室予約もこちらへ）
営業時間： 8時30分～17時（定休日 水曜）
【茶寮SENTAMA（せんたま）】
住所：京都市上京区千本通今出川上ル上善寺町93（千本玉壽軒から一軒はさんだ右隣です）
電話：075-461-5747
営業時間：10時～16時（定休日 水曜）
※菓子教室がある時は12時～16時になることも。事前にご確認ください。
※階段あり。靴を脱ぐので靴下だと安心です。
Text ／倉松知さと
関西在住。キャスター、歴史番組制作、京都情報ポッドキャスト制作などを担当後、京都・歴史ライターへ転向。歴史ガイドブック『本当は怖い京都の話』（彩図社）ほか、雑誌で歴史エッセイを連載中。京都、歴史ジャンルでのラジオ、テレビ出演、講演なども。日本旅行作家協会会員。