世界的に有名なワイン評論家、ジェームス・サックリング(James Suckling)氏が「Great Wines World TOKYO 2024」をグランドハイアット東京で開催。世界30産地から150の優れたワイン生産者が集結してワインを提供しました。東京では初開催とあり、チケットは1か月前に完売。この3時間に及ぶテイスティングイベントには、入れ替わり立ち代わり、計2000人が来場。ワイン愛好家も業界関係者も一緒になり、試飲会というよりもフェスのような熱気溢れる空間となっていました。
サックリング氏が高得点を付けたワインを集めるこのイベントは、2012年に香港とニューヨークで始まりました。その後、バンコク、ソウル、マイアミ、サンフランシスコなどの都市で年に一度ずつ開催されるように。ここに東京が加わった理由は、生産者からの希望が圧倒的に多かったから。事前にサックリング氏は何度も来日し、ソムリエその他、日本のワイン業界の主要人物との交流を重ね、ようやく実現したそうです。東京開催はアジアツアーの一環で、ソウル1,800人、香港1,700人、バンコク1,800人と、既存の巡回地でも人気のイベントとして定着しています。
ジェームス・サックリング氏は、アメリカのワイン専門誌「ワイン・スペクテーター(Wine Spectator)」の編集者としてキャリアを積んだのち独立、自身のウェブサイト「JamesSuckling.com」を立ち上げました。年間数万アイテムものワインをテイスティングしてはスコアを付けています。アジアとアメリカの両方に拠点を持っていて、主に香港に住んでいるため、成長著しいアジアのワイン市場に強い影響力を持っています。彼のInstagramを見ると、精力的に各地を飛び回っては情報発信している様子が手に取るように見えてきます。
会場に集められたのは100点方式で92点以上のワインだけ。そのうち9アイテムは、満点の100点を獲得したワインでした。そのJSポイント100のワインを紹介して行きましょう。
『Château Pontet-Canet Pauillac』2010年
ボルドーのシャトーからの出品が少なかったこともあり、特に人気のブースでした。来る人、来る人に「ビオディナミですよ」との説明を怠らずワインを注いでいたのは、マチュー・シャプティエ氏。
『Bibi Graetz Toscana Colore』2022年
トスカーナで著名な彫刻家を父に持つビービー・グラーツ氏。芸術家肌の彼が自由な発想で高樹齢のサンジョヴェーゼを使ってつくったワイン。「コローレは私の初恋あり、古木への愛情」と言う彼の前には絶えず行列が。
『Damilano Barolo Cannubi Riserva 1752』2016年
2023年度イタリアン・ワイン・オブ・ザ・イヤーに輝いたワイン。1890年創立のバローロでも長い歴史ある生産者です。オーナーのグイド・ダミラノ氏は東京滞在を満喫しておいででした。
『Cantina Terlan Alto Adige Terlaner 1』2021年
満面の笑みでブースに立っていたのはクラウス・ガッサー氏。イタリアのトレンティーノ・アルト・アディジェのワインながら、サックリング氏は東京でのイベントの様子を伝える自身のSNS投稿で、「ほとんどコルトン・シャルルマーニュのようなエレガンスを持つ」と評していました。
『El Enemigo Cabernet Franc Gualtallary Gran Enemigo Single Vineyard』2019年
2023年度アルゼンチン・ワイン・オブ・ザ・イヤーに輝いたワインです。メンドーサの高地にある冷涼な畑の1.5ヘクタールの区画から生まれるカベルネ・フランは特別、と説明するホアキン・ディアス氏。
『Vik Valle de Cachapoal VIK』2021年
南米最高のワインを造ることを目標に、カチャポアル・バレーに2006年に創業した比較的新しいワイナリー。ヴィックというチリらしからぬ名前は、ノルウェー家系のオーナーの姓だと、コマーシャルディレクターのジェイミー・ラモリアット氏が教えて下さいました。
『Seña Valle de Aconcagua』2021年
2023年度チリ・ワイン・オブ・ザ・イヤーに輝いたワイン。アジア・パシフィック統括ディレクターとしてプロモーションのために何度も来日しているジュリアン・プルティエ氏は、もはやセーニャの顔とも言える人物。
場内の空気をフェスのムードにしていたのは、DJのスラン・シドゥ氏。オーストラリア出身、人気R&B男性アーティスト、アッシャーのチャートトップのアルバムを手掛け、オーストラリアの象徴的なバンド、エンパイア・オブ・ザ・サンで7年間演奏してきた注目のアーティストです。
東京での大成功を振り返り、サックリング氏は言います。「日本初開催が実現し、とても満足しています。参加者の皆さんの温かさと親しみやすさ、ワインの知識・洗練・熱意に感銘を受けました。この経験から、もっと日本に滞在し、日本独自のワイン文化を発見したいと強く感じました。」そして、来年11月5日には、さらに素晴らしいワインコレクションを率いて東京に戻ると宣言。「おそらくグレート・ワインズ・オブ・イタリーと共に」とのことなので、イタリアワインファンは、Save the Dateです。
日本に関連する新しいプロジェクトとしては、今年後半に「WineAI.com」をリリース予定。これは、日本のAI企業、VALUENEX株式会社と共に開発したワイン発見プラットフォームです。ユーザーは、アルゴリズム解析されたJamesSuckling.comの18万件に及ぶテイスティングノートを活用し、自分のワインの好みを探ることができるそう。試してみたら、「Great Wines World TOKYO 2025」が、より楽しいものとなるかもしれません。
Text /近藤さをり
ワイン&グルメPRスペシャリスト。ドイツで5年間、日本企業のワイン仕入・販売や、現地ワイナリー勤務を経て帰国。洋酒メーカー広報部、PR会社勤務を経て現在に至る。カリフォルニアワインのPRに15年以上携わる間も、執筆活動は国やジャンルを問わず。JSA認定ソムリエ、ジャパンビアソムリエ協会認定ビアソムリエ。