アルゼンチンワインといえば赤はマルベック、白はトロンテス。ワインをよくご存知の方なら、そう思うのが定石でしょう。が、シュナン・ブランやカベルネ・フランに注力し、高い評価を得ている革新的なワイナリーがあるのです。アルゼンチン最大級のワイナリー、カテナ家5代目アドリアーナ・カテナと、その醸造責任者のアレハンドロ・ヴィヒル氏が2008年に設立したエル・エネミーゴ。ワインの一大産地であるメンドーサの西部、アンデス山脈側の涼しい地域に畑を求めました。
エル・エネミーゴのプレミアムワインが銀座ラティーナ・パリージャにて本格南米料理とともに紹介されました。

ナビゲーターを務めるのは、エル・エネミーゴのアンバサダーでマスターソムリエのホアキン・ディアス氏。2024年のジェームス・サックリング氏主催「Great Wines World TOKYO 2024」の記事にも、100ポイント評価ワインを手にして登場しています。今回はこのワインも含めた白2アイテム、赤3アイテムのラインナップを紹介して下さいました。
ワインの紹介はページトップの画像の左から順に並びます。

🍳自家製ポンデケージョと牛肉のエンパナーダ
焼きたての大きく膨らんだポンデケージョは付け合わせのパンというより、これ自体がシロワインのお供。「エンパナーダは、アルゼンチンではトロンテスを飲みながら食べること多い」と、ディアス氏は言いますが、合わせたのはエル・エネミーゴならではの白品種2アイテムでした。
🍷El Enemigo Chenin 2021
シュナン・ブランは、かつてのセミヨンとブレンドしてシャプリの名で流通していた時代には白ワインの主要品種として大量に栽培されていましたが、今はすっかり減ってしまった品種です。その分、残っているのは古木で凝縮感があります。エル・エネミーゴは、こうした側面に焦点を当てます。このワインは標高950mの畑の樹齢50年の古木を使用、マロラクティック醗酵せずフレッシュな酸を残した、食欲をかき立てる味わいです。
🍷El Enemigo Chardonnay 2021
アルゼンチン国内でも特に高い標高1,470 mの畑は、年間300日以上の日照に恵まれつつも冷涼な環境が溌溂とした酸を生みます。産膜酵母を用いて熟成させたワインは、酸が澱と結びついてクリーミーになることはなく、クリスピーでフレッシュな味わいが残ります。ディアス氏によれば「カリフォルニアとブルゴーニュとの間でブルゴーニュ寄りの味わい」と言います。エンパナーダのサクッとした香ばしさを引き立て、脂身の少ない赤身牛肉フィリングとのバランスも、ほど良い感じです。

🍳自家製チョリソとチミチュリとサルサ
アルゼンチンのBBQ、アサードでは火を起こしてからメインの大きな牛肉の塊が焼けるまでかなりの時間がかかるため、まずグリル料理の最初にチョリソを食べます。ラティーナ・パリージャ自家製チョリソは桜の薪を使用して焼かれたもの。豚肉100%の食べ応えあるこの一品には、赤ワインを合わせたくなります。チミチュリとサルサの2つのソースで味変すれば、ワインとのペアリングがますます楽しくなります。
🍷 El Enemigo Malbec 2020
100年前に作られたフレンチオーク製3000ℓの大樽で15~18ヶ月熟成したワインです。マルベックの特徴であるのスミレのアロマ、タイムやオレガノの特徴が際立ちます。カベルネ・フランが少しブレンドそれたことで、マルベックの果実味にストラクチャーとタンニンとハーバルなノートが加わります。

薪火ならではの魅力を追求し、複数の樹種の薪を使い分けています。高温でゆっくり燃え続け、力強くスモーキーな香りの樫、ニュートラルなバランスで素材本来の旨味を引き立てる楢、ほんのり甘く華やかな香りをまとわせる桜。木の種類由来の香りが食材に移り、味わいにバリエーションをもたらします。

パリージャはアサード用の網のことです。燃え盛る炎をコントロールし、熾火でじっくり食材を焼きあげるのは技術が要ります。オープンキッチンでバチバチと鳴る炎の音を聞き、薪の香りに包まれると、伝統的な南米料理の世界感が目の前に広がります。

🍳パリージャチキン
週末に行なう本場のアサードは、昼前に集まってワインを飲みながら食べ続け、デザートに至るのが16~17時頃だとディアス氏は言います。チョリソと牛肉の間にチキンは多い気がしますが、ワインがあるからこなせるメニューです。

🍳豪州産アンガス牛イチボと薪焼き野菜
薪の熾火は、肉の表面を焦がさずに緩やかな温度変化で焼くため、赤身肉の芯が硬くならずしっとりとした奥行きのある味わいになります。これには偉大なワイン、グラン・エネミーゴを合わせました。いずれもカベルネ・フラン85%, マルベック15%のブレンドで、栽培地の異なる2アイテムです。
🍷Gran Enemigo Agrelo 2019
標高930m。より温暖なためジャミーでフローラル。粘土質土壌からのふくよかなボディと角の取れたタンニンとジューシーさは、今飲んで充分に美味しく感じられます。
🍷Gran Enemigo Gualtallary 2019
標高1470m、アンデスからの風が吹き下ろす1.5haの区画に、50年前のアグレロをセレクションして植えたのが、このグアルタジャリーです。紫外線が強く果皮が厚くなるためpHは高いですが、石灰質土壌からのフレッシュな酸とミネラリーなテンションがあり、美しい骨格のワインです。2013ヴィンテージが南米初のパーカーポイント100を獲得して以来、このヴィンテージもそれに続きました。更に前述のジェームス・サックリングでも100ポイントを獲得しています。
ブランド名のEnemigoは敵(=エネミー)という意味で、「一番の敵は自分。心地よい安定したゾーンに留まることなかれ、内なる恐怖と戦え」という妥協のないワイン造りへの姿勢を表しています。挑戦を続ける哲学がここにはあります。
エル・エネミーゴ El Enemigo https://enemigowines.com/
Text /近藤さをり

ワイン&グルメPRスペシャリスト。ドイツで5年間、本企業のワイン仕入・販売や、現地ワイナリー勤務を経て帰国。洋酒メーカー広報部、PR会社勤務を経て現在に至る。カリフォルニアワインのPRに15年以上携わる間も、執筆活動は国やジャンルを問わず。JSA認定ソムリエ、ジャパンビアソムリエ協会認定ビアソムリエ、Doemens Academy認定Diplom Biersommelier。