一足早く春爛漫の桜から始まる展覧会 生誕130年記念奥村土牛展にて 

日本画の名コレクションで有名な「山種美術館」。2019年は、今ある渋谷区広尾に移転して開館10周年にあたります。その記念第一弾として2019年2月2日(土)から開催されているのが生誕130年を迎える日本画家・奥村土牛展です

山種美術館の創立者である山﨑種二は「絵は人柄である」という信念のもと、画家と直接関わり合うなかで作品を蒐集しました。特に土牛とは親しく、無名だった時期の支援から約半世紀にわたり交流を続け、現在135点に及ぶ屈指の土牛コレクションを所蔵しています。本展ではその中から《醍醐》《鳴門》などの代表作をはじめ、再興院展への出品作を中心に約60点の作品が展示されています。

奥村土牛 《醍醐》1972(昭和47)年 紙本・彩色 山種美術館

まず入ってすぐに、この展覧会のポスターにも使われている土牛の代表作の一つ《醍醐》が目に飛び込んできます。季節を先取りしてそこには春爛漫の桜が咲き誇っています。しっかりした幹に柔らかで透明感のある桜の花びら。土牛83歳の時の作品で、その時から遡ること12年前に師であった小林古径の七回忌の法要の帰りに見た京都のしだれ桜を描いています。この年は待望だった吉野を訪れ、その後88歳の時に自身が「何か荘厳の中に目頭が熱くなった」という《吉野》を描いています。

奥村土牛《吉野》1977 (昭和52)年 紙本・彩色 山種美術館

土牛は、画家志望であった父親のもとで10代から絵画に親しみ、101歳におよぶ生涯において、晩年まで制作に取り組んだ画家。

奥村土牛 《鳴門》 1959 (昭和34)年 紙本・彩色 山種美術館

 

絵の雄大さに目を奪われる《鳴門》は70歳の時の作品。当時は、汽船が渦潮に近づくと揺れに揺れて身体をしっかり支えるのも困難ななかで描いた何十枚の写生と、頭の中に刻み込んだ印象を絵にしたもの。

80歳を過ぎてもなお「死ぬまで初心を忘れず、拙くとも生きた絵が描きたい」と語った土牛。その情熱は静かにしかし溢れるように絵から伝わって来るのでした。

【山種美術館 広尾開館10周年記念特別展】生誕130年記念 奥村土牛

■会期: 2019 年 2 月 2日(土)〜3月31日(日) ■休館日:月曜日

■会 場 : 山種美術館(東京都渋谷区広尾3-12-36)

■開館時間:午前10時〜 午後5時(入館は午後4時30分まで )

■入館料:一般1200円 大高生900円 中学生以下無料 *団体料金は100円引き

山種美術館 http://www.yamatane-museum.jp/

Text /W LIFE編集部

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です