2018年、ルイ・ヴィトンのメンズコレクションのチーフ・ディレクターに就任し世間をあっと言わせた「時代の寵児」、ヴァージル・アブロー。現在、シカゴ現代美術館(Museum of Contemporary Art Chicago)ではヴァージル初の展覧会『VIRGIL ABLOH: “FIGURES OF SPEECH”』(ヴァージル・アブロー:“フィギュアズ・オブ・スピーチ(言葉の姿)”が開催されており(6月10日~9月29日)、大きな反響を呼んでいる。トップ画像:ヴァージル・アブロー Virgil Abloh Photo: Katrina Wittkamp
ヴァ―ジル・アブローは、シカゴ郊外ロックフォード市出身のデザイナー、DJ、アーティスト。両親はガーナからの移民で、ウィスコンシン州立大学では土木工学を、イリノイ工科大学大学院では建築学を学んだバックグラウンドを持つ異色のマルチ・アーティスト。2013年にイタリアで立ち上げた自身のブランド「Off-White (オフホワイト)」は若者の間で瞬く間に人気に火が付き、一躍ストリート・ファッションのカリスマとなった。また、シカゴ出身のミュージシャン、カニエ・ウェストとも親交が深く、彼のクリエイティブ・チームのスタッフとしてアルバムデザインなどを手掛けている。
そんな彼が初の個展を地元シカゴの主要な美術館で行ったことはとても大きな意味を持つ。「自分もかつては(美術館近くの高級ショッピング街) ミシガン・アベニューに買物に来る消費者のひとりにすぎなかったんだ。この展覧会は日頃は美術館に来ない人たち、特に自分と同じ肌の色を持つシカゴの若者達が自分を表現する道を見つけ出すきっかけになってほしい」と、ヴァ―ジルは言う。
過去20年間の軌跡が一堂に
展示は、「Early Work(初期作品)」、「Fashion(ファッション)」、「 Music(音楽)」、「Intermezzo(間奏曲)」、「Black Gaze(黒人の視点)」、「Design(デザイン)」、「The End(終わりに)」という7つのセクションから彼の過去20年の軌跡をたどる構成。これまでヴァ―ジルがインスパイアされてきた現代美術、建築、音楽やファッションなどを見て取ることができる。
Text /長野 尚子 取材協力/斉藤博子
フリーライター、編集者。(株)リクルートの制作マネージャー&ディレクターを経て、早期退職。アメリカ(バークレー)へ単身“人生の武者修行”に出る。07年よりシカゴへ。シカゴのアート&音楽情報サイト「シカゴ侍(www.Chicagosamurai.com」編集長。四国徳島とシカゴの架け橋になるべく活動中。著書に『たのもう、アメリカ。』(近代文芸社)。http://www.shokochicago.com/ 日本旅行作家協会会員。