【不老脳 (2)】認知症の初期症状か?!  危ない物忘れと心配ない物忘れの見分け方

連載がスタートし、「すべての人が認知症になるって!?」「今が20年後に影響するって…」などなど、多くの反響をいただきました。ありがとうございます。

さて、今回は、日々みなさんが、「やばいなー」「全然ー出てこない」と、不安と関心を持ちながら戸惑っている「物忘れ」のお話です。

脳の機能は20歳をピークに直線的に下降

まず、「なぜ物忘れが起こるか?」からお話させてください。

川島隆太博士は、記憶にかかわる脳の働き「ワーキングメモリー」を作業机に例えて話をされます。 若い頃はみんな、広い作業机を持っています。資料をいくつも並べて、作業をすいすい進めることができます。けれども、年を重ねるにつれて机はどんどん小さくなります。作業机の広さを記憶の容量と考えてみてください。作業机が小さくなれば、記憶できる量も少なくなっていきます。

一般的に年齢を重ねていくと、作業机は狭くなる、つまり脳の働き「ワーキングメモリー」が衰えていくと言われています。そしてこの働きを担っている脳の部位が、脳の「前頭葉」にある「前頭前野」と呼ばれる場所です。この前頭前野が衰えることで、「物忘れ」が起こるわけです。

前頭前野は、「考える」「記憶する」「アイデアを出す」「感情をコントロールする」「判断する」「応用する」など、人間にとって重要な働きを担っています。しかしこの認知機能、実は20代をピークに直線的に機能が下降していくことが分かっています (図・赤線)。年齢を重ねるにつれて、語彙力など知識が必要とされる能力は徐々に向上するものの(図・黒線)、20歳から徐々に認知機能は低下しているので、衰えを知恵や経験でカバーしていたのが、40代半ばをすぎると脳の機能低下のほうが勝ることになるというわけです。

そして40代を過ぎた頃から、多くの人が「物忘れ」を自覚するようになります。人や物の名前、場所の名称など固有名詞がとっさに出てこず、「あれ、それ、これ」など、指示代名詞でその場を取り繕えてしまうこと、多いですよね。また思い出せないと、すぐにgoogle先生に聞いてしまうのではないでしょうか?

危ない物忘れは、体験そのものを忘れる

「物忘れ」が増えてくると、認知症が心配になってくる方も多いようです。「物忘れ」は、加齢にともなう脳の働きの衰え、通常であれば認知症の心配はありません。しかし同じ「物忘れ」でも、体験や出来事そのものを忘れてしまう場合は、MCI(軽度認知障害)や認知症の初期によくある症状なので注意が必要です。

【危ない(認知症による)物忘れ】

*体験そのものを忘れる。食べたこと自体を忘れる。

*味付けの仕方がわからなくなる、判断できなくなる。

*買い物に行ったことを忘れて、また買い物に行く。

【心配ない(加齢による)物忘れ】

*体験の一部を忘れる。何を食べたかを忘れる。

*料理の手順を忘れる。

*買い物へ行って、何を買うかを忘れる。

みなさんの物忘れは、心配のない加齢による物忘れであるケースが多いと思います。でも安心しないでください。脳は確実に衰えていきます。衰えることで作業机は小さくなって、記憶できる容量が少なくなっているのです。

日々の暮らしの中で、作業机を広くする、「ワーキングメモリー」を鍛えるトレーニングを紹介します。ぜひ、物忘れ防止のためにやってみてください。

・買い物リストを記憶してからスーパーへ行く。

・電話番号や数字を意識して暗記する。

・新聞を読んで、印象に残った単語をあとからピックアップする。

・電車の吊り広告を見て覚え、単語を思い出す。

・寝る前に今日の楽しかったことを頭で振り返る。

次回は、「【不老脳 (3)】「40代からの過ごし方が将来を決める 脳によい生活を出来ているかをチェック」です。

Text / 糸藤友子

リクルート→ベネッセ→ミズノを経て、50歳で脳科学ベンチャーへ。母の死をキッカケに健康寿命の延伸をミッションと決める。「人生は1回きりの旅である」から、いろいろな人と出会い、様々な体験をして、豊かに生きたいと願う。ベンチャーでは、脳を計りながら鍛える“最新”脳トレサービスを立ち上げ中。
【Active Brain CLUB】https://www.active-brain-club.com/

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